願いへの布石
私はミハイル様をこの国の王にしたいと考えてる。
ザミエルとかいうダメ人間が王になった暁には、この国が滅びへと向かうことになるのは確実。
それだけは避けなければいけない。
ただ問題なのはミハイル様自身だ。彼は王になることに一切関心がない。
どうやってやる気を引き出すか、それが一番の課題だね。
解決策が浮かばないまま、しばらくたったある日のこと。
私は王子に20人ほどの刺客が向けられているという情報をつかんだ。
20人とは、こりゃまた大規模な襲撃だね。そんなにミハイル様を排除したいのかな。
首謀者はミハイル様にかなりの執着心を抱いている者だ。まぁそんなやつ一人しかいないよね。
というわけで、今回の計画者は“第1王子ザミエル・アーノルド”
襲撃が第1王子主導であると公に知れれば、ザミエルは廃嫡、あるいは極刑となり王族から追放されることになるだろう。
そうなれば王位継承権第2位であるミハイル様が次期国王に決定する。
これであとはミハイル様の意志の問題だが、私は解決策を見出した。
それは王子の目の前で私が死ぬこと。
うぬぼれではないけど、私はミハイル様に唯一信用されている人物だと思っている。
自分の大切な人が死の直前に願いを口にすればどうなるだろう。
言われた側は、その願いを何としてでも叶えようとするよね。
私の狙いはそれ。もとより自分の命なんか惜しくもなんともないし、ミハイル様のために死ねるなら本望だね。
襲撃の日私は計画を実行に移した。
「ミハイル様、今日の夜に襲撃があるので私はこの部屋で待機させていただきます」
「……ああ、わかった。というか、なんでそんなことまで知っているんだ?」
「細かいことはお気になさらず」
そして夜中の2時。この時間帯だけは見回りの騎士がいない。要するに襲撃には最適な時間だね。
そして予想通り20名ほどの黒ずくめの連中が襲撃してきた。
正直言って、こんな連中は私の敵じゃない。
さてさて、いかにして自然な感じで殺されようか。
とりあえず20人は多すぎて邪魔ね。大半の方々にはご退場してもらおう。
一人に狙いを定め、瞬時に距離を縮めて斬り捨てる。
「フフフ、一人目の処理完了」
相手が唖然としている間に、次々と命を刈り取る。
一人を斬る度に私の全身は返り血で鮮やかな赤に染まる。
私はただ自分の大切なものに手を出す奴には容赦しない。
どんな惨いことをしたって罪悪感のカケラも感じることもない。
みんなだってそうだよね?
そして大切なもののためなら己の命もかけられる。
「やっぱ『死神』相手にゃ手も足も出ねぇか。ま、初めから無理だってわかってたがな」
「当然でしょ。じゃあ、私の目的達成に協力してもらおうかな」
「目的だぁ?」
「そ。ただ私と相討ちになるだけでいいよ。それですべてが整うから」
「よくわからんが……ああ、いいぜ。どうせ死ぬ身なんだ。あんたに協力してやるよ」
その後数度剣を交えたのち、互いの身体を貫いた