バイト先にて2
「聞いたよー、魔法少女に選ばれたんだって?」
「正直悔しいです、僕も狙ってたんですが」
「しかし20代で魔法少女ってすごいよね、よっぽど天才だよ」
バイト仲間がどんどん俺が知らない情報を口に出してくる。あれ? あの悪い白昼夢は偽物ではなかったのか?
「ほら、早速ニュースでやってる」
店長が店の備え付けのテレビをつける。それは何の変哲もないニュース番組だった。
『えー、この度遂に、この地球を救う魔法少女に適した魔法少女が誕生しました。少女といいますか、青年なのですが、彼は変身の度に姿が変わるそうです。本日見つけられた魔法少女は××市に在住の○○という青年で……』
その映像には、俺が、恥ずかしい格好で敵を倒している動画が流れていた。スカートのみで脛毛ボーボーだ。
なんだこれ。誰かが撮っていたのか? あの場には変なオッサンと職務を全うしていないような警察官しかいなかった。多分、オッサンだろうと思った。
「なんだこれ……」
思わず呟いた俺の肩を店長がわしづかみにする。
「まさかお前知らないのか?」
「何がですか?」
すると店長、その他の同僚先輩後輩が、あー、といった感じで頷いた。
「あんたテレビの最新ニュースとか見ないんだっけ」
「見ませんね」
「ここ最近ずっとやってるよ。地球に襲いかかってるエイリアンがいるって」
エイリアン? そんなのがここに……地球に……来ていたのか? それじゃあ俺が先ほど倒したのはエイリアンだったのか?
「え、でもエイリアンにしては……弱かったというか……」
俺がそう言うと、周囲が湧いた。
「さすが魔法少女に選ばれた人は違うな!」
「初戦が楽勝とは……勇気君の勇気は本物ね」
「い、いや、そういうのではなくて」
どう考えてもおかしい。確かに俺はテレビはアニメ位しか見ないし、ネットニュースも見ない。必要がないと思っているからだ。
だが、この場面ではそれが通らない。
「じ、じゃあ、俺がその……」
「魔法少女」
「そう、それ……になったことは、皆さん知っているんですか?」
店長が高笑いをした。
「この居酒屋だけじゃなく、全世界知ってるよ」
俺は目眩を覚えた。