バイト先にて
昨日は最悪であり全く意味がわからない1日だった。まず俺はスカートのままでアルバイト先に出勤するほどの勇気は無かったので、全力疾走で家まで戻り、フリフリひらひらのスカートを脱いで(これがまた更に腹立たしいことにサイズはちょうどよく、すんなり脱げた)、手持ちの少ないジーンズに着替え、再度バイト先に向かった。
途中であの妙な出来事を引き起こしたオッサンと遭遇した場所を通ったが、既にそこには誰もいなかった。警察官までもがおかしな言動であったし、もしかしたら俺は夢を見ていたのかもしれない。
しかし、その希望は遅刻して辿り着いたバイト先で打ち砕かれた。
まず、通常ならば遅刻を咎めるはずの店長がにこにこしていた。我がバイト先の居酒屋の店長は厳しい人で、まあ気の良いところもある人なのだが、時間厳守は当たり前だった。
「すみません、遅刻しました」
「ああ、大丈夫だぞ。それよりお前、魔法少女に選ばれたんだって?」
「……はい?」
「さっき国から連絡が来てな。いやぁ、うちの居酒屋のバイトから伝説が生まれるなんて凄いことじゃねぇか」
……いや、もう意味がわからない。なんで店長はさっきの、あの、ちょっと頭がおかしい出来事を知ってるんだ? しかも国から連絡?
俺の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだ。
そうこうしている内に、バイト先での同僚や先輩、後輩が俺を囲んでいるのに気がついた。