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あなたへ

拝啓、君へ

作者: 桜ノ夜月

すれ違う瞬間、君と視線がぶつかって。


にやり、とお互いに笑ったね。


それだけで良かった。それだけで幸せだったよ。


ねえ、ある日突然、すれ違う瞬間に君とまた視線がぶつかって。


にやり。と笑おうとしたのに。


ふい、と君に顔を背けられてしまったな。


あれはかなり堪えたよ。自業自得だけれど。


それから


「君は何も解ってないよ」



苦々しく言葉を吐きだす君に、思わず俯いてしまって。


ねえ、あの言葉が精一杯だったって。


本当はちゃんと気付いてたよ。


だから僕はあえて君に



「言われなくちゃ解らないよ」



なんて、嘘をついたんだ。


君に嘘をついた理由を、僕は知らない。


それを嘘だと思わなかっただけかもしれないし、自分の心すら騙した嘘だったのかもしれない。


或いは、あれは本心だったのかもしれない。


でも、どちらにせよ君にはもう伝えられないね。


恨みなんて勿論無くて。寂しさは当然募って。


『楽しかった』あの時のこと、未だに思い出しては嘆いてしまう。


でもそれも、「良い思い出」って思える日がいつか来ると、僕は信じて居るから。


もう友達じゃ無くても良い。


もう親友じゃ無くても良い。


この先永遠に戻れなくても構わない。



君と共に選んだ未来だから。



すれ違う瞬間。君はもう此方を見ない。


すれ違う瞬間。僕ももう君を見ない。



それで良い。それだけで、僕も君も生きていけるから。



ねえ、こんな酷い人間があの日まで君の隣で友達面をしていて、本当にごめんね。


君が辛い時に、助けてあげられなくて本当にごめんね。


「一緒に出かけよう」って言った約束、守れなくて本当にごめんね。


「卒業式の後に、一緒に帰ろう」って言った約束、もう忘れてね。


「馬鹿」ってお互いに言い合った日々、とても楽しかったよ。


「もう疲れた」って君に言わせてごめんね。


君は他人を傷つけるのが苦手なのに。それは、僕から切り出すべき答えなのにね。


「何も解ってない」って言わせてごめんね。


「君の考えが全部解る訳無い」って言ってごめんね。


君の精一杯の僕への叫び、ぶつけてくれて有難う。


君は僕なんかには勿体無い位の友人だから。



合格おめでとう。



誕生日おめでとう。



新年明けましておめでとう。



メリークリスマス。



ハッピーハロウィン。



今年は君と、何一つ分かち合えなかったから。



これから先も、きっと分かち合えないから。



「合格おめでとう」



直接言えない事が、如何してこんなに苦しいんだろう。



「朝会で褒められていたね。凄いね。流石君だよ」



言いかけた言葉を、口内で咀嚼して呑み込む。



「卒業式が終わったら、一緒に帰ろうか」



あの日の約束は、もう果たせないみたいだ。



「ごめんね」



もう今更な言葉達だけれど。



これだけは、どうか聞いて欲しい。



これから君は何度も傷ついて、何度も涙するだろう。


理不尽な現実に、絶望を感じる事もあるだろう。また他人に気を遣って、自分をないがしろにするだろう。


また涙を堪えて、自分で悲しみを処理しようとするだろう。


君は頭は良いのに自分を大切にしないから。優しすぎて大馬鹿なんだ、君は。



……けれど。



どうか、自分の幸せを第一に考えて欲しい。


他人に気を遣い過ぎてはいけないよ。君がいつか重圧に耐えきれなくなるから。


「我儘のやり方」を、「人への甘え方」を、少し学んでおくれ。


お節介かもしれないけれど、君は「他人」の忠告は聞き入れてくれる筈だと信じて居るから。


五月蠅うるさい手紙でごめんよ。



結びに。



君に最後の頼みがあるんだ。今更過ぎて、きっと君は怒ると思うけれど。


どうか聞き入れて、長い長い君の人生の中で、いつか実践してくれたら、とても嬉しいよ。


ねえ、どうか、僕が君に渡した「手紙」や「プレゼント」、「お土産」を捨ててはくれないかい?


君の人生の中から、「僕」と言う存在の「全て」を消してはくれないかい?


破り捨てたって構わない。燃やしたって構わない。


時が解決するんじゃ遅すぎるんだ。僕は今すぐ君に忘れて貰いたい。


我儘な僕の最後の頼み。どうか聞き入れてくれたら、とても嬉しいよ。


それでは、僕はいつまでも、君を大切な友人だと思っているよ。


身体には気をつけて。君の未来が幸福で包まれている事を、僕は祈り続けよう。


君が末長く幸せで在りますように。



                                          敬具

さよなら、優しい君へ。

どうか、幸せに。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  こんにちは。タケノコです(^^)。  拝読しました。切なくて切なくて悲しくて悲しくて……でも優しい物語でジーンと胸にしみました! 二人が幸せになったら良いなあと思いました(^_^)。素…
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