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籠の中の世界は  作者: K
6/15

勧誘

どうも説明口調になってしまう・・・

新学期開始から1週間、俺達兄弟は少しずつ微妙に距離を縮めながら平穏な学園生活兼同居生活を送っていた。

楓は相変わらずの無口だが、最初の頃の敵意はなくなり、少しずつだが会話も続くようになった。俺としては大きな進歩だと思っている。

こんな風に平穏が続けばいいなと思うが、平穏など崩れるのが定石、嵐の前の静けさとでもいうのか、俺達の平穏はあっさりと崩れ去った。




「なんか今日は校門が騒がしいな」

「?」

俺達はいつも通り学園へと向かっていると、校門に人だかりができているのを見つけた。

そして、近づくにつれてだんだんとその正体が分ってきた。


 「野球部部員募集中でーす!一緒に甲子園目指しましょう!」

 「サッカー部はいつでも君の活躍を待っている!」

 「一緒に精神を鍛えましょう!弓道部へどうぞー」

 「ともに神の一手を目指そう!囲碁・将棋部!」


忘れていた、新学期開始から一週間目、部活動勧誘解禁日。

各々の部活動は新入部員確保のため毎朝早くから校門で激しい勧誘合戦を繰り広げていた。

「うぅ・・・」

あまりの熱狂ぶりに楓も圧倒されたか、俺の後ろに隠れて制服の裾をつかんでいた。どうでもいいが皺になるから地味に困る。まぁ可愛いから文句は言わんが。

「楓、一気に通り抜けるからなるべく離れるなよ」

「ん」

俺達は暑苦しい群衆の中を切り抜けるために近づく。すると聞きなれた声が。

「おぉぉー!そこにいるのは我が愛しきプリンセス楓!さぁ、我と共に演劇と言う名の愛の舞台へと舞いあがろうではないか!」

八幡新之助、普段から演技っぽいセリフと無駄にでかい声から演劇部に入部していた。勧誘に来た部長曰く、「これだけ恥ずかしげもなく堂々としていられるのもある意味才能」らしい。

だが、この無駄な才能も今回は裏目に出た。

新之助が叫ぶと、一瞬辺りがシーンとなり、楓に向かって部員たちが殺到した。

「楓ちゃん!ぜひうちのマネージャーにならないかい?」

「いえ、楓ちゃんは私たち女子サッカー部で優勝を目指すのよ!」

「何を言う!楓ちゃんは我ら合唱部でその美しい声を響かせるのだ!」

あぁ、面倒なことになった。

ここ竜ヶ崎高等学校は小・中・高と一貫のマンモス校で、8割9割が小等部からの内部生で、外部生は珍しい。そんなただでさえ珍しい外部生のなかで、たった1週間で楓の噂が全校に広がった。

1年にとても可愛い子が転入してきた。勉強も運動も得意らしい。いつも無口だが、たまに発する声がやれ可愛らしいなどと様々だ。

そんな楓を一目見ようとクラスまで押し掛ける人もいるらしく、困っているらしい(雪穂ちゃん情報)。

「楓、走るぞ!掴まってろよ!」

「んぅ!」

俺達は迫りくる部員たちの間をなんとか潜り抜け、校内へと避難した。校内では原則勧誘は禁止されているから安心だ。



「はぁ、疲れたぁ・・・」

朝から無駄な体力を使った。毎年毎年熱心なものだ。

「お疲れ様。見たよ、愛しい妹との愛の逃避行!」

今度はこいつか、と面倒だが横を見る。

桜咲 桃花、俺のクラスの委員長を務めていて、楓ほどではないが桃花も可愛いと学年で評判が高い。150センチと小柄な体格に似合わず出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んだアンバランスが逆にいいとマニアックな意見まである。顔は童顔で、本人は大人っぽくなりたいらしいが中学生でも充分通る可愛さだ。背中まで届く黒髪に前髪に付いたヘアピン(毎日変えているらしい)がチャームポイントらしい。

そんなか弱そうな桃花だが、実家が桜咲流合気道の道場を営んでおり、彼女もまたその流派を学んでいる。小柄だからと強引に迫り痛い目見た馬鹿が年に2・3人はいるそうだ。

「はぁ、そうですかぁー」

「ちょっと、朝からやる気ないなー」

うるさい、俺はもう疲れたんだ。

桃花とは小等部から一緒の腐れ縁で、お互い気心知れた仲である。

昔から新之助、桃花、俺の3人でよくつるんで遊んでいる。

「楓ちゃんの人気はすごいねー、どの部もあの子を入部させようと必死みたいだよ。かく言ううちもそうなんだけどね」

ペロっと舌を出す桃花、これは昔からの彼女の癖だ。

桃花は水泳部のエースであり、2年生ながらもレギュラーで頑張っている。去年もなんか大会で個人記録を出したとかどうとか。

「たぶん朝のあれ、楓ちゃんがどっかに入部しない限り毎日続くと思うよー」

「だよなぁ・・・」

さて、どうしたものか・・・

「うちはいつでも歓迎だよ?」

「校内での強引な部活動勧誘は原則禁止である。校則第13条」

「強引じゃないし、これはただのアドバイス。セーフ」

なにがセーフだ、本気の目だったぞ。

「だったらさ、あんたの部に入部させちゃえばいいじゃん」

「うちの部、かぁ・・・」

それだけはなんだか言いにくくて隠していたが、それが一番事態を収束させるのに近道なのであろう。ただ・・・

「んー・・・」

「なーに迷ってんの。まさか、まだ恥ずかしがってるの?」

「いや、まぁ、別にそんなんじゃないが・・・」

しょうがない、放課後ダメもとで声をかけてみるか。

やっぱ部活動は青春ですよねー。みなさんは部活動なにしてましたか?俺は工芸部で陶芸やガラス細工をしてましたー

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