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籠の中の世界は  作者: K
5/15

夕焼け

無口な子って、いいですよね・・・

始業式はだいたいが半ドンなのが通例だ。うちの学校もその例外に漏れることなく半日で終わった。

「っかぁぁぁぁ、終わったぁ」

「さて、我々も帰るとするか、健吾よ!」

俺たちは帰り支度をしていると

「おおおぉぉぉ!!」

急に新之助が叫ぶ。まぁいつものことだから驚かないが。

「我が愛しのプリンセスよ!まさか貴女からわざわざご足労願えるとは!」

プリンセス?まさか、とその言葉に教室の入り口を見ると昨日からよく見るブロンドヘアーが見え隠れ。

俺はカバンを持ってクラスを出る。

「楓?」

「っ!!」

楓はビクッっとして黒髪の女の子の後ろに隠れてしまった。というかこの子誰だ?

「楓ちゃんのお兄さん・・・ですか?」

「あぁ、そうだが・・・君は?」

「申し遅れました、私、町田雪穂と言います。楓ちゃんのお友達です」

おぉ、人見しりっぽいから心配していたがちゃんと友達ができたか。

「帰ろうと誘ったら、家までの道が分らないそうなので、お兄さんのとこにきたんです」

「ち、ちがっ!分る・・・もん・・」

必死に強がりを見せようとするがだんだんと尻すぼみになってゆく。朝一度しかまだ通っていないから覚えてなくてもしょうがないか。

「じゃあ帰るか、楓」

「・・・ん」

楓と雪穂ちゃんを連れて帰ろうとする。しかしそれを阻む奴。

「待ってくれ我が愛しのプリンセスよ!聞けば貴女はこの学校に転入してきたばかりという。私が貴女をご案内してさしあげよう」

「・・・いい、雪穂に頼む」

がはぁ、と崩れ落ちた馬鹿は放っておいて今度こそ帰路へとつく。




「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

雪穂ちゃんは反対方向なのか、校門を出てすぐに分れてしまったので朝の再現である。

「雪穂ちゃんって言ったっけ、よかったな、友達ができて」

「・・・ん」

会話終了。だんだん分ってきたが、この子の返事は基本一文字だ。

俺たちは無言のままてくてくと歩いてゆく。

「あ、そうだ」

「?」

「楓、まだこの町あんまり知らないだろ?色々案内してやろうか?」

「・・・・・・」

楓はしばらく巡回した後、うなずいた。




コンビニ、スーパー、駅前、時間をつぶせそうなところを色々と案内してゆく。

この子は基本「ん」しか答えないが、目は口ほどにも物を言う、興味がある場所に行くと目がキラキラするからさりげなく色々誘導して案内する。だんだんとこの子が分ってきた気がする。人見しりなのはそうだが、基本無口と言うか、あまりしゃべらない子のようだ。

俺たちはファーストフード店で軽く昼食を済ませると、駅前にあるデパートに来た。この町一番の大型商業施設である。心なしか楓の目もキラキラしている。

「中もちょっとぶらつくか」

「ん」


洋服、雑貨、小物、色々な店を周る。新しいものを見るたびに目を輝かせる楓は、口数は少ないがなんだかこっちまで楽しくなってくる。

今はなんとなく立ち寄ったアクセサリーショップを物色中。

「・・・お」

「?」

「あぁ、いや、なんでもないよ」

俺は楓にそうごまかし、店内を見る。楓はあっちにちょこちょここっちにちょこちょこと、動き回っている様はなんだか可愛らしい。

俺は楓がアクセサリーを見るのに夢中な隙を狙って動いた・・・。




「ここが最後の場所、竜ヶ崎中央自然公園だ」

「おぉ・・・」

楓が珍しく、ん、以外の言葉を発した。無理もない、ここは県内最大の規模を誇る自然公園で、遊具もなかなかに揃っている。全長約30mの滑り台など、見るだけで迫力がある。

俺は時計を確認するとパンダの遊具を眺めていた楓を呼んだ。

「ちょっと見せたいものがあるんだ」

「?」



公園を突っ切り、林道を抜け、少し林を抜けると、そこは小高い丘になっていて、この竜ヶ崎町を一望できる場所になっていた。俺の密かなオススメスポットだ。

「・・・・・・。」

楓は相変わらず何も言わないが、目が綺麗だと訴えている。

「さて、そろそろかな」

俺はその場に座り込むと、少し迷った後、楓もちょっと間隔を開けて座った。

目の前に広がる町並みも見せたかったが、もう一個、俺が見せたかったもの、それは

「ほら、これが俺のオススメの眺めだ」

「わぁ・・・」

真っ赤な太陽が空をオレンジ色に染め上げ、ゆっくりと沈んでゆく。遮るものはなく、ただただその沈んでゆく様子を眺めることができる絶景ポイント。

その眺めは圧巻で、楓も口を半開きにして眺めていた。

さてと、ここらへんかな。

俺はカバンからあるものを取り出す。

「楓」

「ん?」

小さな紙袋。それを差し出すと楓はおずおずと受け取った。なんだかその様子が警戒した猫のようで少し面白い。

「中、開けてみ」

「ん」

楓は紙袋を開けると、そこには

「わあ・・・」

花のペンダントトップが付いたシルバーのネックレス。楓という名前にもかけて、花を選んでみた。

ネックレスが夕陽を反射してより一層キラキラと輝く。

「・・・あの、これ」

「やるよ」

俺は少し照れくさくなって夕陽を眺める。

すると隣でなにやらごそごそ動く気配。

「・・・あの」

「んー?」

隣を見ると、ネックレスをつけた楓がいた。キラキラと夕陽に照らされながら輝くそれは、同じく夕陽に反射してキラキラ輝くブロンドヘアーと同様に美しかった。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

思わず無言になる。いや、そうじゃなくて

「あの、似合ってるよ」

「・・・ん」

心なしか、楓の頬が赤く染まって見えたのは夕焼けのせいか、それとも・・・。

ちょっと主人公キザすぎたかな?感想、コメント等ありましたら遠慮なくどうぞ。

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