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籠の中の世界は  作者: K
3/15

ひとりぼっち

まだだ、まだ終わらん!

朝だ。

うるさいアラームを消して起き上がる。

今日から新学期、早く準備しなければ。

リビングへ行くともう親父と桜子さんがいた。

「おはよう」

「おう、おはよう健吾」

「おはよう、健吾くん」

いつもの定位置に座る。が、何かが足りない。

「おい健吾、楓ちゃん起こしてきてくれないか?」

そうか、楓がいなかったのか。つーかなぜ俺が。

「楓ちゃん、あさによわくて・・・ごめんなさいね」

なぜ俺が起こす前提で話が進んでいるんだ、裁判員はいないのか!



そんなこんなで楓嬢の部屋の前。

まずはマナーのノックから。

コンコン、と2回、しかし返事がない。こんどはもう少し強めにノックする、が一向に返事がない。

ま、まさか中で事件が・・・?!

なんてアホなことは起きるはずもなく、おそらくまだ寝ているのだろう、朝に弱いと言っていたし。

しかし、嫌われ(?)ているのに勝手に部屋に入っていいのだろうか、これ以上溝が深まって常時敵意むき出しの視線に晒されては俺の胃が持たない。

だが残念なことに時間は刻一刻と過ぎる。こうしている間にも朝の貴重な5分が過ぎた。

桜子さんの許可(都合のいい解釈)も得ているんだ、入るか。




やーい、へんなあたまー

がこくじんはこっちくんなー

――違う、私は日本人!

やーいやーい

なんでがいじんがにほんにいるんだよー

――違う!

はやくじぶんのくににかえれよー

――違う!!




「―――違う!!」

「っうお?!」

楓を起こそうと部屋に入ったはいいが、なにやらうなされていたためやんわりと起こしていたら急に叫んで飛び起きた。びっくりした。

「・・・・・・?」

楓は寝起きでよく状況を理解していないようで、ボーっとした様子で辺りを見回す。

そして、ベッドサイドに膝立ちになっている俺に目線が向くと、だんだんと目がハッキリしてきて

「っきゃあああああああああああああああああああああああ!!!」

バチーン、という音と悲鳴が朝の閑静な住宅街に響いた。




「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

無言。高校までは徒歩で10分ほどの距離なのでひたすら歩く。

無言、無言、無言。

こうなるのには一応訳がある。



あれから悲鳴を聞きつけた親父と桜子さんが駆けつけて桜子さんがパニックを起こす楓をなだめ、俺はとりあえず親父と退散して見事な紅葉マークのついた頬を冷やしに行った。

10分ほど経ってからか、楓が制服姿に身を包み桜子さんと降りてきた。

「・・・・・・ごめん」

どうやら誤解は解けたらしい。

「俺の方こそ、勝手に部屋に入ってすまなかったな」

俺は初めは理不尽だと憤りもしたが、不慣れな家で寝起きに見慣れぬ男がいたらそれは驚くだろうと納得させ、怒っていませんよアピールをしてみた。

アピールが効いたのかどうか分らんが、昨日みたいな敵意の目はなくなった。

「そうそう、健吾くん」

おっとr・・・桜子さんが話しかけてくる。

「なんです?」

「楓、まだがっこうのばしょ、おぼえてないのよー、だからー、いっしょにつれていってあげてね」

まじですかー



「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

無言。無言がこれほど気まずいとは思わなんだ。

「き、今日は天気が良くてよかったなー」

「・・・・・・ん」

会話終了。

いや、もっと長引かせようよ!俺が気を利かせて話題を出したのだからもう少し拾ってくれてもいいだろう。

いい加減無言にも限界を感じ始めたころ、

奴がきた。

「やあおはよう健吾!今日は新学期にふさわしい清々しい朝だなぁ!そうは思わないかい?」

八幡やはた 新之助しんのすけ。小学校からの腐れ縁で、ほぼ毎年同じクラスか隣のクラスになっている無駄に暑苦しいやつだ。

あと、こいつには一つ悪い癖があって・・・

「おや!この実目麗しい美少女はいったいどなたであろう!まるでおとぎの国からやってきたプリンセスのような美しさ!それはもう、僕のハートがその美貌に根こそぎ奪われてしまったかのような衝撃!」

「な、なに、こいつ・・・!」

さすがに人見しりっぽい気の楓にこれはいきなりハードルが高かった、いや、高すぎた。

おかげで(?)楓は俺の後ろに隠れ、俺の制服の裾をギュっと掴んでいる。

「おやおや、怖がらないでおくれよ僕の麗しいプリンセス!さぁ、ここで出会ったのも運命!僕と一緒に秘密の花園と言う名の学び舎へと行こうではないがへらっ!」

俺は無言で奴の顔面に裏拳を入れる。

「ごめん、朝からちょっとグロテスクだったな。こいつは八幡新之助、まぁ覚えても覚えなくてもいいけど一応よろしくしてやってくれ」

「う、うん・・・」

と、そこで俺の制服を掴んでいることに気がついたのか、顔を赤くしてバッっと離れる。恐らく無意識の行動だったのだろう。

俺達は寝ている(?)新之助をそのままに、学校へと向かった。



「ま、待ってくれ、僕のプリンセス・・・ぐふっ」

ご意見、ご感想、批判、中傷、同情はどうぞご遠慮うなくどうぞー

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