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籠の中の世界は  作者: K
15/15

安心

くんかくんか

「ふぁっ?!」

・・・ん、なんだ?

俺は眠いまぶたを開けると、至近距離に楓の顔。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

しばらく無言で見つめ合う。

「・・・えと、あの」

「ごめんな」

「・・・えっ!」

「昨日楓が話してくれなかったから一緒に寝ることになったんだ。びっくりしただろ」

「・・・あ、えと、ん」

まだ少し混乱している楓。

「とりあえず、この腕を放してくれないか?」

楓は一晩中俺に抱きついていたようだ。

「ご・・・ごめんなさい!」

パッと離れる楓。さすがに少し恥ずかしかったのか少し顔が赤い。

「それじゃあ、学校の準備もあるし、一旦俺は部屋に戻るな」

「・・・ん」

そう言って俺は楓の部屋を後に・・・

「何してんだ、二人とも」

「あらぁ、ばれちゃった」

「健吾、男ならもっとこう、ガバっとだな」

俺は力ずくで扉を開けて二人を押しのける。まったく、いい年してなにやてるんだか。

俺は馬鹿二人を放って置いて部屋に戻る。




「ふぅ・・・」

びっくりした。起きたらお兄ちゃんの顔が目の前にあるんだもん。

心臓が口から飛び出るかと思った。

お兄ちゃんの寝顔、見ちゃた・・・

「可愛かった、な・・・」

って、なに言ってるんだろ。

顔が熱い。ダメだ、いつも通り、平常心で。

私はチラリとベッドを見る。

ここでお兄ちゃんと一晩・・・

って、だから、そうじゃなくて!

忘れよう、よし、昨日は何もなかった。

私は火照る頬を極力気にしないで学校の準備をした。

そういえば、昨日はいつもの夢、見なかったな・・・




「おはよー」

「・・・お、おはよう」

楓がなんだかぎこちない。まだ朝の事引きずっているのだろうか。

「楓、朝の事は「はい、パン」・・・あぁ、ありがと」

忘れろ、という事ですか。

俺はパンをもしゃもしゃしていると、桜子さんがいつもよりニコニコしているのに気付いた。いや、にこにこというよりニヤニヤか。

「どうしたんです?桜子さん」

「んー?べつにー。健吾君も楓ちゃんも、すっかりなかよしさんになったみたいで、お母さんうれしくてねー」

そう言って桜子さんはデジカメを操作する。

「まさかぁ、一緒に寝てるなんてねー」

そこには俺達が抱き合って寝ている写真が収められていた。しかもいろんな角度から何枚も。

「って、何撮ってるんですか!すぐ消してください!」

「いやよぉ、わたしのたいせつなコレクションなんだもの」

「コレクション?」

「そ。楓コレクション」

そう言うと桜子さんはリビングの戸棚からアルバムを持ってきた。

「お、お母さん、それっ」

「これはぁ、楓ちゃんがしょうがっこうに入ったばっかのころのしゃしんねー」

楓が必死に閉じようとするがそれをうまくかわしながらアルバムを広げる桜子さん。

「楓ったら、ぜんぜんとらせてくれないんですもの、だからいつもこっそりとってたの」

「盗撮じゃないですか!」

「ふふふっ」

「いや、笑ってごまかさないで下さいよ!」

桜子さんはアルバムを閉じると俺に向きあう。

「健吾君のおかげで、楓ちゃんがどんどんいいほうにかわってると、わたしはもうの。健吾君、これからも、楓ちゃんをよろしくね」

そんなのは言われるまでもないが、改めて言われるとなんだか気恥ずかしさがある。

「いいなぁ、パパも楓ちゃんともっと仲良くなりたいなぁ」

きもいわ。




それから、試験までの2週間楓の部屋で勉強会が行われることになった。

楓は基礎ができていないだけで本当は頭がいい。少し教えるとすらすらと問題を解いてゆく。これはこんどの試験も期待できるかもな。

「平均点94点。いい感じだ」

俺特製のプリントを採点すると楓にそう言った。

楓は疲れたのか机に伸びている。

「楓ー、疲れたか?」

「・・・ん」

「じゃあ、今日はこの辺で終わりにするか」

俺は持ってきた教科書や筆記用具を片付ける。

「じゃ、また「・・・待って」・・・どうした?」

楓は相変わらず机に突っ伏して表情が見えない。

「・・・お願いが、ある」

「なんだ?」

「・・・・・・。」

言いにくいのか、恥ずかしいのか。

しばらくした後、楓はゆっくり顔を上げると言った。

「・・・また、一緒に寝てほしい」

なんですとー。




冷静になるには素数を数えるといいと誰かが言っていた気がするが、全然冷静になれなかった。

この間のは事故だったが、今回は楓から誘ってきたのだ。

楓の様子を見る。楓は俺の胸元に顔をうずめているからここからではつむじしか見えない。

俺はゆっくりと、楓の髪を撫でた。

楓は一瞬ピクッとしたが、そのまま身を任せる。

「・・・何かあったのか?」

頭を撫でながら問いかける。

「・・・・・・。」

楓はもぞもぞと動くと、こちらを向いた。

「夢、見なかった」

「夢?」

「・・・そう」

俺はゆっくりと楓の髪を撫でながら、楓の話を聞いた。

「・・・私はイジメられてた。いろんな、ひどい事、された。夢でも、いつも、あいつらが、ひどいことしてきた」

「・・・・・・。」

「でも」

楓は俺の目をまっすぐ見る。

「・・・お兄ちゃんと寝ると、怖い夢、見ない。安心して、寝れる」

「・・・そっか」

俺は割れ物を扱うかのように優しく楓の頭を撫でながら言った。

「俺は正直、兄として楓になにをしてあげられるか分らなかった。勉強を教えるくらいしか思いつかなかった」

楓を優しく抱きしめる。

「こうやって一緒に寝ると安心して寝れるなら、いつでも言いな」

「ん」

俺達はお互いの体温を共有しながら眠った。

この物語は100%作者の妄想でできております。

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