あ
今回セリフ1こしかありません
俺は奇々怪々な夢をそのまま流して1人での昼飯を迎えた。
カステラとチーかま。
絶妙な砂糖の甘味とチーズの酸味がマッチした俺の毎日の弁当である。
これを毎日食べ続けてからはもう変態への道を一直線に突っ走ること確定。
更には演劇部に入ると言うことが瞬く間に広まり実は石田くんは超ド変態なんじゃね疑惑がクラス会議にも出された程である。
全く…俺が何をしたと言うのだ…。悪い事など一度もした覚えがないが。
それにしてもなんなんだ。さっきの夢は。イシーダ?神秘の翼?夢にしては鮮明過ぎる。して、あまりにも御伽である。俺がまるでグランドキャニオンにでも行き着いてしまった…というよりむしろグランドキャニオンに行った夢など有り得ると信じがたい。
俺はチーかまを口に残し、カステラをむさぼり食った。
そもそも学校で突っ伏して3、4時間睡眠するということもありえがたい。
それでは恋愛の息吹きの吹かざる……いや、吹くべくる高校生活に支障が出るではないか?
そんなヤンキーぶりを見せてもなんにもならない。
ていうより何故号令の時も誰も起こしてくれなかった!?
有り得るわけがないぞ…
いや有り得ると認めざるを得ないか…。
カステラにチーかまの最後の切れ端を突き刺して一口に頬張った。
これにて昼飯終了。使用時間はきっぱり10分。
俺は回りとは自ら隔離するように窓の外を臨み、流れ行く雲に目をやった。
ああ、こうしているときにも薫さんは可憐な黒髪をぷよぷよと揺らし仲睦まじい女子とのランチを楽しんでいるのだろう。きっと薫さんのことだから手作りのお弁当を皆に披露しているのだろう。それもどや顔をせずに謙虚に見せているのだろう。笑顔がまるでリアルにそれこそ鮮明に想像することが出来る。
……薫さんの手作り弁当を食べてみたいものだ。
勝手にふらふらと動きだす体を止める理由もなくそのまま流れに身を任せていたら廊下をさ迷うように歩き始めていた。
さりげなく教室をのぞき、薫さんの居場所を探しだし何組か会釈しようとしていたのだ。体は。
紳士な俺はそんなことをするまでもなく聞き出しているだろうが、何故かストーカー行為をしている自分がいる。
そんな自分が嫌いな訳でもなく、ただただ言い訳にしているだけであったのだ。バレてしまった時の口実…というより自分の自尊心への口実と言わざるを得ないだろうな。
そして俺は見つけてしまったのだ。可憐な黒髪をぷよぷよとさせて笑いながら女子とのランチを楽しんでいるあの少女を…
あ。
「カステラ…食べてる」
かたよりがひどいですね