あ、あれ…やべっ
何か…暗くなっちゃぢゃ…
「石田。日本語の使い方おかしいぞ」
憂鬱と高揚感と共に階段を上がっているとき、またもあの男装少女が壁からひょこっと現れた。
「師匠…どうしたんですか…?」
「そもそも恋愛の息吹きの吹かざる高校生活では、〜ざると言う活用を使ってしまっているではないか」
「はい…で、どうしたんですか?」
そして師匠は後ろに手を組ながら続けた。
「働かざる者食うべからず。と言う言葉は知っているな?」
働かざる者食うべからず。この言葉は良く小さい頃母に言い聞かされていた言葉であった…
働かない人間は食を得るべきでない。
そのため俺は母の手伝いを強要されていたのを思い出す。
「意味は知っているようだな。この言葉でも使われている、〜ざる。もう分かっての通り、〜ざるにはしないや、〜ないなど否定の意味なのだよ」
「…」
「君は恋愛の息吹きの吹かない高校生活を祈願しているのか?違うだろう。国語力のない人間だ」
そう吐き捨てられ師匠に何かを投げられる。
どすっと体で受け取ったそれは
俺のわすれたはずの鞄であった。
〇
「ただ…いま帰りました…」
いつでも帰宅時の扉を開けるのは恐怖でしょうがない。皆だってそうだろう?母にまた怒られないといけないから…
「和也…!座りなさいお話があります」
嫌いだ。家も家族も。
「あんた何で早く部活に入らないの!いい加減にしなさい!だいたいあの学校の豊かな部活に憧れて入ったのでしょう!?そもそも…」
あのテレビも。この花瓶も。この絵も。
「恥なのよ!和也…あんたが部活に入らないから保護者会でも私は恥ずかしい思いしているのよ!?…」
嫌いだ。母も…姉も弟も。
「部活に入らないなら今すぐ学校やめて働け!!早く決めなさい!!」
嫌いだ。この名前も…この体も。
「出てけ!!一家の恥なのよ!出てけ出てけ!!お父さんがどう思うかわかってるの!!」
「…」
「…何よ…いきなり立ったりして…文句でもあるわけ…!」
駄目だ。手を出しては。
お父さんが言ってた…お母さんには絶対暴力はふるうなって…
何で…
どうして…
「自分の部屋に戻ってます…」
これが俺の日課。
家に帰って…
母におこられて
父親の話をもってこられるとイラついて
自分の部屋にもどる。
前の母は…どこへ行ってしまったの…?
この話…終わるんでしょうか…