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バスケ道  作者: yama14
本編
72/72

第58Q 「2点は要らない、俺が欲しいのは3点だ!」

 アップとミーティングを終え、体育館に入ると、試合は4Q残り2分を切り、立修学園が65対55で10点リードしていた。

「うーん、厳しいか?」

 和泉先輩がボソッとつぶやいた。

「いや、そんなことないと思いますよ。オフェンスのチャンスは2回は必ず回ってくる上、ディフェンスでスティールを決めて3P4本決めれば楽々逆転です。ただ、これ以上点差をつけられると、終わりだと思います」

 榊先輩が和泉先輩に向かって言った。

「でもそんな簡単のように言うけど相当きついだろこの状況…」

和泉先輩がぼやく。

 旭がボールをもっている。王陵のオフェンスのようだ。






※※※※※※※※※






 こいつのディフェンス、しつこい…

 中々思うとおりにゲームメイクできない自分に腹が立った。

 糸満が45度で手を挙げている。そこにパスしよかな…


 と、見せかけてっと!

 俺は糸満をフェイクに使い、クロスオーバーをして橘を抜き去った。

 バスケなんてのは意地悪な奴が勝つんやで!

 そのままジャンプシュートを放った。

 65対57。あと8点!

 ん?なんでや…その余裕そうな顔は…?

 まあ、いいや。

 相手は時間を遣って丁寧に攻めてくる。相手にボールをとられるような無謀なオフェンスはしないつもりのようだ。

 必死のディフェンス。糸満や松田、野中も頑張っている。俺も頑張らんってあかんな…

 だが橘のゲームメイクは堅実で、ボールをうまく展開していく。

 こいつは頭がよい。相手が今、この状況で何をされたら一番嫌なのか知っている。

 そして倫太郎へパスし、ボールを受け取った倫太郎が糸満をワンフェイクで抜き去った。

「カバー頼む!」

 糸満が叫ぶ。

 カバー、行ったるで!

 倫太郎がシュート体制に入ろうとしている。ちょっと、待てよ…!!

 だが倫太郎のそれはフェイクだった。

 そして俺が空中から落ちてきた瞬間、倫太郎は飛びジャンプシュートを放った。

 ピュルルルルルルルル!

 バスッ!!

 67対57。差は10点。くっそっ!

 俺は野中から出たボールを受け取り、フロントコートへボールを運ぼうとした。

 時間がない―残り1分半…!あかん…!

 そう思った瞬間、俺はボールをファンブルしていた。

 あかん!!

 橘は一歩先に出てレイアップを決めようとしていた。

 決めさせてたまるか!

 だが俺はその数秒後、審判に笛を吹かれながらリングに吸い込むボールをただただ呆然と見ていることしかできなかった。







※※※※※※※※※






 これを決めたら、王陵へトドメを刺せる…!

 橘藤馬はそう確信していた。

 これを決めれば、70対57で差は13点。残り時間は1分15秒。相手は3P4本でも追いつけなくなる…

 俺は深呼吸をして、ドリブルを2回ついた。

 そして落ち着いてシュートを放った。

 これで、終わりだ!!

 

 

 あ…れ…?

 打った瞬間、俺は入らないことを確信した。ボールにスピンがかかっていないのだ。

 なんでだ…?単なるフリースローだぞ!?なんでだ!!



 さすがの橘藤馬も、完璧ではないのだ。




 

 

※※※※※※※※※






 フリースローを打った瞬間、決まらないと思ったのは橘藤馬だけではなかった。姫宮旭もそうだった。

 これは、外れる…!

 案の定外れた。野中が必死にスクリーンアウトをして、リバウンドをキャッチした。

 チームメイトを信じるってのはこういうことなんやで!

 俺は野中がリバウンドをとってくれると信じ、一か八かの賭けに動いた。

 フリースローを打った瞬間、俺はフロントコートに一気に走った。

 そしてセンターラインで野中がリバウンドをとったのを見届けた。

 「野中、くれ!!」

 俺は野中から弾丸パスを受け取った。

 「3Pは打たせるな!!」

 倫太郎と竜太郎の声が重なる。

 セーフティにいた橘が後ろから追いかけてくる。

 2点はいらないんや…俺が欲しいのは、3点だ!

 俺はスリーポイントラインから2歩離れた右10度から、3Pシュートを放った。

 ピュルルルルルルルル!!!

 バスッ!!

 「おっしゃああああああ!!!」

 会場からも大きな声が沸き上がる。

 うららも俺の方を見て右手をかかげていた。

 お前らのこと、全市に連れてってやるからな…!!

 あと9点。点差は1ケタに戻した!残りは1分1秒。追いつける!

 必死にディフェンスをする。足はいたい。連戦連戦で疲れた。けど、勝ちたい!!

 その思いはチームのみんなも同じだった。

 松田がパスカットをした!

 俺はすぐに走り出す。

 「速い…!!!」

 橘が呟いたのが聞こえた。

 「スピードでは負けねぇよ!」

 俺は松田からボールを受け取り、今度は左10度で3Pを放とうとした。

 先ほどの3Pの残像が橘に残っていたからかもしれない。

 橘は冷静さを欠いていた。3Pを決めさせたくない…もう、負けたくない!という思いが彼を突き動かした。

 橘は完全にファールをしてしまった。

 だが旭はバランスを崩しながらも、腕だけを何とか残し、3Pを放った。

 旭はそのまま後方へ崩れた。

 だがボールは立修学園の思い虚しく、リングに吸い込まれた。

 「おっしゃあああああああ!!!」

 糸満、野中、松田の叫び声が聞こえる。

 糸満と野中が俺を引っ張ってくれた。

 「おっしゃ!」

 2人とハイタッチを交わす。4点プレイだ!

 「1ショット!」

 絶対に、決めてやる…!

 緊張していないかと言われればウソである。緊張していた。だけど、ここで決めなければという責任感が彼を突き動かした。

 フリースローはリングにあたりながらも、入った。

 69対64!差は5点!

 ここで立修学園がタイムアウトを取った。


 

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