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バスケ道  作者: yama14
本編
59/72

第45Q 「キャプテンの威厳」

「氷陵…あの時のお礼、出来なくてすまん!」

俺は精一杯頭を下げた。

「いやいや、大丈夫さ。僕も旭に何も言わず日本に帰ってしまったし。本当こちらこそ挨拶もせず日本へ帰ってしまいすまなかった」

氷陵は言った。

「タイラーとは、まだ連絡を取ってるんか?」

俺は氷陵に言う。

「ああ、取ってるよ。まだリハビリ中だけど、ようやく走れるようになったってさ」

「そうなんか…」

あの時の事が無ければ、今タイラーはどれくらいバスケが上手くなっていたんだろうか。





タイマーが動き出す。

残りは1分とちょっと。

ボールは立修学園。

そして俺は橘に対してディフェンスをついた。

「榊は下がったか…まああの焦りようだったら妥当だな」

橘は俺に対してぼそりと言った。

「榊先輩の借りは、俺が返します」

「おお、言ってくれるなあ。ここは1学年上として礼儀の知らないダンク坊主に威厳を見せつけないといけないかな?」




「完全なアイソレーション…!」

榊は言った。

「遼、藤馬は勝負をしかけてくる!気を付けろ!」

榊は出る限りの声で叫んだ。




榊先輩の声を聞き一瞬横目でコートを見ると、完全なアイソレーションだった。

来るな…俺はそう思った。

橘は一度レッグスルーで呼吸を整え、ボールを右手から左手へ持ち替えた。

俺は左側のスペースを大きく空け、右へ進入させまいとした。

右へドリブルは出来ないはずだ。

橘は左側へ体を入れ、俺とボールとの間に橘自身の体を挟み込んだ。

ボールは左側にある。体を押さえつけられている今、ボールは見た目ではすぐ取れそうなのだが、取れない。


その瞬間だった。

パシンッ!

和泉先輩が低い身長を生かし、低い姿勢で上手くボールを奪い取ったのだ!

「身長が低いからって何もできないって思うなよ!」

橘の意識は俺だけに向けられ、他のメンバーには向けられていなかった!

「ちくしょう、戻れっ!」

橘は叫ぶ。

俺は全速力で和泉先輩を追いかけた。

だがしかし。

さすが橘と言うところなのだろうか。

橘はフロントコートでギリギリ和泉先輩に追い付いた。

「待てよ!」

「速い!」「異常や…」

会場全体がざわめく。

俺は橘が和泉先輩に追いつくと同時に、俺は和泉先輩がいる反対側を走っていた。

「さっきのダンク坊主も速いぞ!」「凄いスピードだ!」

さらに会場全体がざわめく。

「遼、頼んだっ!」

和泉先輩から見事なパスをもらった後、俺は綺麗にレイアップを決めた。

60対62!

「和泉先輩っ!遼!見事だった!」

榊先輩は叫んだ。

「おう!」「はい!」

俺と和泉先輩の返事の声が重なる。

1Q残り50秒。


ボールは立修学園ボール。

橘がボールをドリブルする。

俺は異変に気付いた。

前のエルボーパスの時のように、3Pラインに全く近付こうとしないのだ。

舐められたもんだな、俺も…

少し時間を空けたらエルボーパスが通ると思ってんのか、橘…

橘も策が尽きてきたようだな。


ダム、ダム、ダム、ダム、ダム、ダム、ダム!

7回、右!

俺は右へ手を出そうとした、その時だった。

「まんまと引っかかったな。お前が馬鹿で良かったぜ」

橘はそう言い残し、俺をドリブルで華麗に抜いて行った。

くそっ、やられた!

ヤバい…!

ここで点を取られてしまったら…!

勝つ可能性がさらに低くなる!

「ヘルプ!」

俺は叫んだ。叫ぶことしかできなかった。

だが、その思いが通じたのか、

「待てっ!」

和泉先輩と黒船先輩、3年コンビがヘルプに入る。

しかし橘はそれを予測していたかのようにフローターシュート(ティアドロップとも呼ばれる、スクープショットをオーバーハンドのレイアップで放つもの。どちらがやりやすいかは人によって異なるが、こちらもブロックをかいくぐるために通常よりも高いアーチを描くことになるため難しいシュートになる。どちらかというと長めの距離の時に使用することが多い )を放った。


ボールは山なりの軌道を描いた。

フローターシュートが入るか入らないかは、予測しづらい。

和泉先輩は、「リバウンド!」と叫んだ。


だが…

バスッ!

見事に弾道の高いシュートはリングの面とほぼ垂直にスウィッシュしてリングへ入り込んだ。




「橘さん…美しい…見事なフローターシュートだ」

新太は見惚れてしまった。

「西成、これで万事休す、か…」

西内はもう少し見たかったというような顔をして言った。



残り36秒、60対64。

和泉先輩についているのは倫太郎。

和泉先輩がボールを運ぶ。

俺は倫太郎へスクリーンをかけた。

倫太郎は見事に引っかかり、和泉先輩はフリーになる。

だが倫太郎はすぐに体勢を立て直し、和泉先輩へ追い付こうとした。

和泉先輩はそれを完全に読んでいた。

倫太郎が戻ろうとして和泉先輩がいる方向へ体を一気に寄せた瞬間、ボールを手元にクロスオーバーで引き寄せ、右へ1つドリブルをついた。

倫太郎は手をついてバランスを崩した。

「うちは鉄平と遼だけじゃねぇんだよ!」

そのままジャンプシュート。

和泉先輩のシュートは、教科書のような美しさだった。

入る。

俺は確信した。

ピュルルルルルルル!

バスッッ!

審判が3本指を立てる。

「3Pだあああああ!」

「和泉先輩、来たーー!!」

「大我…!カッコいい!」

西成ベンチから今の和泉先輩のビックプレイに、賞賛の声がそこら中から上がった。

63対64!


ただ時間は17秒と、西成に残された時間は少なかった。


立修学園にゆっくり責められたら…確実に負ける。

多分橘は24秒をフルに使って攻めてくるだろう。

立修学園側としては最悪、ボールを持ったままシュートを打たなくても良いんだからな。

となると…俺らがボールを奪い取るしかない。


どうする、俺!?


どうする、西成!?



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