表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バスケ道  作者: yama14
本編
58/72

第44Q 「絶体絶命のピンチ」

「ピーーーーーー!青7番、チャージング!白ボール!」


「やらかしたっ…」

美奈さんは頭を抱えた。

やっぱりさっきタイムアウトをとって交代するべきだった…!

榊君の異変に気づけなかった私のミスだわ…!

残り1分14秒。58対62、点差は開いている上にボールは立修学園ボール。

これは相当厳しい…!


美奈さんはタイムアウトをとった。




「これはヤバイですね、西成」

新太が言う。

4点差の上に、ボールは立修学園。攻撃回数は2回しかないだろう…先程のプレイから見ていると、榊さんが3Pを入れる確率は相当低い。3Pは水ものだ。一瞬の焦り、戸惑いが数センチの狂いとなってシュートにあらわれてしまう。

だから…

西成は、ここで立修学園の攻撃を抑えなければ、負けだ。

もし6点差以上に開いてしまったら、榊さんの3Pがほとんど可能性のない今、もう西成には打つ策が無くなる。

後は遼…!

榊さんが絶体絶命のピンチの今、西成を救えるのはお前しかいねぇぞ!

俺は絶対的に西成を信じてる!




榊先輩がチャージングファールを犯した。

この事実は、俺の胸にがん!と響いた。

俺は西成のみんなを見る。


まだ目は死んでねぇ!!

諦めてるやつの目は、俺は一瞬でわかる。

ただこの絶体絶命の状況で、西成に諦めてるやつは1人も居ない事が俺には分かった。

西成のみんなの為に、俺は絶対勝つ!


「遼、お前が逆転ゴールを決めてやれっ!」

新太の声が聞こえた。

ありがとう、新太…

宮之城、千束、仙道…

俺らに負けたチームの分まで、俺らが頑張らないといけない!



「最初に…」

美奈さんは一呼吸置いた後、ゆっくりと告げた。

「榊君、和泉君と変わって」

榊先輩は悔しそうに顔を歪めた。

「なんでですか!この状況、3Pを決めるしか逆転出来ないんですよ!そんな時に俺が…」

「榊君!今の精神状態で、3Pを冷静に決められるの!?」

美奈さんが榊先輩へ目で訴えかける。

その時だった。

「おい、鉄平。俺を信じろ。俺は西成バスケ部キャプテンなんだぞ。いつから俺は鉄平に心配されるような雑魚になったよ?俺は4Qまで満身創痍で必死に頑張ったお前らに何もしてやれなくて、悔しかったんだよ!4Qの残り1分弱、お前らのおかげで休ませてもらった分、俺がみんなを助ける」

和泉先輩はゆっくりと、そしてはっきりと言い切った。

榊先輩は数秒黙ったあと、ゆっくりと告げた。

「そうですよね…和泉先輩、後は頼みます…」

「おう、任せとけ!」


榊先輩は一気に力が抜けたようにベンチに座り込み、顔を伏せ、下を向き嗚咽を漏らした。


「これは絶対よ。次の立修学園の攻撃、シュートを止めて!シュートを止めなければ、榊君がいない今、逆転する事は不可能に近いわ!ディフェンスはこれ以降、絶対に点を取られちゃダメ!いい、分かった!?」

美奈さんは大声で叫んだ。

「はいっ!」

みんなの声が揃う。

「それとオフェンスだけど…吉見君、後は頼んだわ。榊君が居なくなった今、吉見君、点を取れるのはあなたしかいないっ!いい、みんな、吉見君へボールを集めて!相手に吉見君にボールを集めてる、ってわかっても良い!もう吉見君、西成はあなたに任せたわ!」

榊先輩はここまで頑張ってきたんだ…

ここで俺が頑張らなくてどうする!

「分かりました!」


「頼んだぞ、遼!」「吉見君、頑張って!」

西成のみんなが声援をくれた。

みんな…ありがとう…

この時、俺はプレッシャーと言うより気持ち良さを感じていた。

こんな状況でチームの命運を任される事、その事に対する嬉しさがプレッシャーを上回ったのだ。

最後に俺は榊先輩に話しかけた。

「榊先輩…橘に対する借りは、俺が代わりに返しときます。勝って戻ってくるんで、顔を上げて下さい。榊先輩が1番頑張ってたんですから…」

榊先輩の返事はなかった。

だがその代わりに、榊先輩の手が俺の手を握った。

そして小さく、しかしはっきりした声で、

「頼んだ…」

と榊先輩は言った。

「はい!」




遼君…

バスケをしている遼君は、やっぱりカッコ良かった。

まだ試合を諦めてない事が、遼君の目からいっぱい伝わってきた。

神様、お願いします…

遼君、怪我しないで…そして、遼君に、力をあげて…!

まだ中1なのにチームを引っ張る遼の姿は、桜の目にかっこよく映えた。


「両チーム、コートへ出て!」

審判の声が響いた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ