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バスケ道  作者: yama14
本編
53/72

第39Q 「恭介のフリースロー」

「バスケットカウント、ワンスロー!ファール、白5番!」

西成ベンチがわきにわく。

「長瀬君、ナイスー!」

桜が笑顔でほめていた。

なんか腹が立った。

恭介ばっか…俺ももっと凄いもん見せてやる!


49対49。

試合会場は静寂に包まれた。とても準決勝の試合会場とは思えない。

ダム、ダム―

恭介のドリブルの音だけが2回試合会場に響く。


逆転できるのか―できないのか―


ここはだれの目から見ても、試合の分岐点であることは明らかであった。


俺は目を閉じ、心の中で願った。

恭介、頼む―!



※※※※※※※



「バスケットカウント、ワンスロー!ファール、白5番!」

うっしゃあ!

これで同点!同点ゴールを決めたぜ!

俺は飛び上がりそうになった。

今まで何もみんなの力になれなかった。それが本当に悔しかった。

どんどんシュートを決めていく遼を見て、その悔しさがどんどん募っていく。

だがこのシュートは我ながら、値千金のシュートだ、俺はそう思った。


「ワンショット!」

審判の声が響く。

もう1度、みんなの力になりたい!

そのためには、このシュートを決めなければ!

絶対に、決めてやる!


ダム、ダム―


俺は足元でドリブルを2度ついた。


そして、俺はボールを放った。



※※※※※※※



パスッ!

ボールと布が気持ちよくかする音が聞こえた。

1秒の沈黙の後、会場がわきあがる。「いいぞ、いいぞー!」「逆転だー!」


俺は目を開けて得点板を確認する。


50対49になっていた。



俺はミーティングがてら横目で隙間から見える得点板を確認する。

50対49になっていた。

ここからやで、遼―

西成は初めてのリードや。逃げる側に転じることになる。そこから逆転し、逃げ切るのもまた逆転するのが大変だったように、もっと大変やで―

残りは3分45秒。

逃げ切れ、遼、逃げ切れ、西成!

「ファイトやで、遼!」

旭はつい叫んでしまった。


良くやった、恭介!

恭介が頑張った分、俺も頑張らないといけない。

立修学園を、突き放す!


「ファイトやで、遼!」

声が聞こえた。この独特な関西弁。絶対に旭だ。

ありがとうな、旭―

確かに天童とも戦いたい。神杉ともC対決をしたい。

だが、昔からの友達である旭を含めた王陵との区予選決勝での再戦。

それが1番俺はしたかった。

俺も勝つ、だから、頑張れよ、旭!

俺は心の中でそう叫んだ。


そう思った瞬間、また立修学園顧問・川松和夫がタイムアウトを取るのが分かった。

審判の笛が鳴る。

立修学園がとれるタイムアウトは、これで最後だ。




「まだだ!逆転出来る!オールコートマンツーマンは完全に相手に予測されてたみたいだな。こっからはさっきのハーフのマンツーマンに戻していい。4Qは急に点取り合戦になってる。橘、特におまえはPGとして相手の榊にハイペースな試合展開に持ってかれてるからな、相当焦りもあるだろう。だが、1から3Q西成がディフェンスのしあいにノッてきたのと同じように、逆に今度はお前らが点取り合戦にノッてやれ!お前らのディフェンス力には俺はいつも驚かされてる!だがな、お前らがディフェンスだけじゃないってことを西成に見せつけてやれ!すまんな、俺は今指示できるのはこれくらいだ。頼りない顧問でホント申し訳ないな。ただ、お前らの底力を見せつければ、絶対勝てるはずだ、行け、立修学園、ファイトォォ!」

つい叫んでしまった。前の健康診断でも悪かった心臓にこれは響くぞ、と川松は頭の隅で考えながらも、選手たちの表情を見て、俺はこの鼓舞は間違っていないと確信した。

「はいっ!立修学園、ファイッ!」

観客達が振り向くくらい大きな声を出し、立修学園の選手はコートへ散っていった。


特に橘、お前はこの試合に思い入れがあるだろう。前新潟でやった同期のミニバス全国大会MVPの1人との試合では怪我をさせられ途中交代、広島でやった同期のミニバス全国大会MVPとの試合ではそいつと1個下のやけに上手い奴の2人にコテンパンにやられてしまったもんな…


MVP3人全員に負けるのは相当屈辱だろう、橘―

あいつはあんなことを口で言いながらも、チームの中ではバスケが一番好きな奴なんだからな―


頑張れ、橘!

川松は心の中で叫んだ。



「丹原君、良くやったわ!ナイスよ!あのシュートは本当にカッコ良かったわー!よし、これで逆転よ!4Qはオフェンス中心の展開に持っていけてるわね。このままいつもの西成のペースでどんどん立修学園を引き離して行って!もちろん、油断はしないようにね!初めてのリードなんだし、追われる側も辛いわ!さあ、行ってらっしゃい!」

美奈さんが言った。

するとあっちのベンチから大きな声が聞こえて来た。

和泉先輩が笑う。

「ふっふっふ…あっちもあんな大きな声だしてんな…こっちも出すぞ、に、し、な、りぃぃーー!!ファイトッ!!」

「ファイッ!」

今度は観客が西成ベンチを見たのは言うまでもない。



試合再開のブザーが鳴る。


泣いても笑っても最後の3分45秒だ。


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