第38Q 「借りはすぐに返します」
ピュルルルル!
バコンッ!
ボールはリングの淵に当たった!
くそっ!
外れた!
「ファールよ!!」
美奈さんが必死にアピールするも、審判は聞く耳を持たない。
「リバウンッ!」
黒船先輩が叫ぶ。
俺は一度着地し、もう一回ジャンプした。
橘と俺のリバウンド勝負!
だが橘がさっきの俺へのディフェンスの時のジャンプで早く地面に足をつけすぐにもう一度ジャンプしていた為、俺は完全に1テンポ遅れていた。
取られる…!
バスッ!
俺はボールが橘の手の中に収まるのを確認した。
くそっ、取られた…
そう思った瞬間、パシンッ!というボールを叩く快音がした。
「いただき!」
「榊…!」
榊先輩はそのままボールをスティールするとターンし、ゴール下を決めた。
「きゃーーー!!!!!」
西成ベンチから歓声が上がる!
47対49!
ついに2点差!
均衡を破った!
4Qは残り4分。
「突き放すぞ!」
榊先輩の声が聞こえる。
「はい!」
橘がドリブルをする。
先ほどとは打って変わって、明らかに焦っていた。
シュートモーションに入る。
「まだ早い!」
竜太郎が叫んだ。
だがそれは味方まで引っかかりそうな見事なフェイクだった。
「カバー!」
黒船先輩が叫ぶ。
橘はドリブルをし中へ切り込んで行く。
榊先輩はジャンプしてしまい追いつけるはずもなかった。
さっきも助けて貰ったんだ!
借りを、返す!
「おりゃあああああああああ!」
「おりゃあああああああああ!」
叫び声が重なる!
バシンッ!
聞こえた音は、ボールをブロックした音だった。
「走れっ!」
美奈さんが叫ぶ。
「行けぇぇぇーーー!!」
和泉先輩が叫ぶ。
ボールは恭介の方向へ飛んで行く。
恭介、頼むっ!
俺は心の中で願った。
恭介はそのままレイアップをした。
だがその瞬間俺は驚愕した。
なんでお前が居るんだよ!
とてつもない速さで竜太郎が追いついていた!
しかし身長では恭介が勝ってるはず!行ける!
俺から見る恭介の姿は竜太郎と被って見えなかった。
どーなってる!
ボールが放たれたのが見えた。
ボールはリングの淵に当たる。
ガコンッ!ボールは一度空中へ浮いた。
ガコンッ!今度はさっき当たったリングの淵の逆側の淵に当たる。
またさらにボールは空中へ浮いた。
だがそのシュートは、立修学園の部員の思いは届かず、見事にリングへ吸い込まれた。
ピーーーーーーーーッ!
審判の笛が鳴る!
「バスケットカウント、ワンスロー!ファール、白5番!」