第30Q 「Run a game!②」
試合は6対6の同点。
タイラーがドリブルをし、ボールをフロントコートへ運んで行く。
「Hey!(くれ!)」
旭についている黒人にボールが渡る。
「遼、油断するな!」
あ…
そう思った時には、もう俺の脇を通り抜け、ゴールへ走り抜けていた。
その黒人のパスはシュートのように放物線を描き、空中を舞った。
そのパスを空中で受けたタイラーは、そのままそのボールをリングへ叩き込んだ。
バコンッ!
ゴロンゴロンゴロン…
ボールは虚しく転がった。
ア、アリウープ…嘘だろ…
普通の俺らくらいの年のガキが成せる技じゃねぇ…
「タイラー相手に油断は点を献上しているようなもんや。気ぃつけや。まだまだや。取り返すぞ!」
旭が言った。
そしてアリウープを決めてもクールな顔のタイラーは、こう告げた。
「Switch!(コートをチェンジしよう!)」
すると粛々とコートをチェンジし始めた。
旭が言った。
「ストリートバスケではオーソドックスな13点先取のゲームの時は、7点でコートを交代すんのが主流なんやで」
「へぇ…」
ただただ感心する事ばかりで、びっくりする。
「まー相手に7点目取られたのは悔しいで。俺らはここからや。逆転しまっせ!」
「おう!」
パシンッ!
ハイタッチを交わす。
旭がドリブルをしていく。
中国人にパス、そこから白人へ。
その白人がシュート!
ガシャンッ!
くそっ、外れた!
そのリバウンドをとったタイラーは、ものすごいスピードでフロントコートへ走って行った。
は、早い…
くそっ、追いつけねえ!
バコンッ!
ダンク決められたっ!
「Wow!」
そこら中から歓声が上がる。
それを良い事にタイラーはジャンプをして空中で1回転した。
そして、
ダンク!
その空中に舞うタイラーの姿は、まるで鳥のようだった。
くそっ、やられっぱなしじゃねぇか…
「まだ2点差、追いつける」
旭は言った。
ただここで遼は小学生ながらに限界を感じ始めていた。
体のポテンシャルの違い。大きさ。ジャンプ力。瞬発力。スピード。
何もかも持っているもののタイラーとの差はあまりにも大きく、誰から見ても歴然としていた。
こいつには追いつけない。
遼は、少し諦め始めていたのかもしれない。
ただ、この試合であまりに大きな自分の才能に気付くとは、遼は思いもしていなかった。