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バスケ道  作者: yama14
本編
40/72

第27Q 「アメリカへ②」

「とりあえず…何か食べよっか!」

うららの母さんはそう言いながら、サンフランシスコ郊外のファストフード店に入った。

「アメリカの食べ物がお気に召すかな?」

うららは言った。

「飯なら何でも食える」

「あんたは犬か」



店内に入り、道路沿いの窓際の席に座る。そして開口一番、俺は思ったこを口にした。

「サンフランシスコって日本より涼しいんですね」

「そうなの!私も日本にいるときはアメリカは暑いイメージがあったんだけど、そんなことなくってびっくり!冬も暖かくて、四季があまりないの。夏と冬の気温差があまりないのが特徴かな」

うららの母さんは丁寧に説明してくれた。

「へぇ…」

俺はうららの母さんの説明に感心するばかり。

「意外でしょ?サンフランシスコは過ごしやすい街なの。だからアメリカ中の人たちも避暑に訪れるくらいで」

俺はひたすらうなずく。

うららの母さんは閃いたように言った。

「あっ!うーん、旭君、ここに来るって言ってたけど、まだかしらね…」

旭…?もしかして、その例の姫宮誠選手の息子か!?

「あの、旭って誰ですか?」

「あれ?うらら、まだ言ってなかったの?」

「あ、ごめんね、遼。名前は言ってなかったか。前行った今日本人初NBA選手として注目されている選手、姫宮誠の息子、それが姫宮旭っていう名前なの!」

話に夢中になっていると、店員が来て言った。

「Are you ready to order?(ご注文はお決まりですか?)」

「Yes, I'm ready to order. (はい、注文します)」

うららの母さんが英語で注文していた。思わず見とれてしまう。すげぇ…本場の英語だ…かっこいいな…

「遼君、何食べたい?私はいっつもここではがっつりステーキを食べるけど。うららはいつものね」

「うん!」

うららは言う。

「前の席の人が食べているピザが食べたいです!」

前の席の人が食べていたピザがうまそうだったのを覚えていた。

「メニューではどれかしらね…あ、もーいいや。めんどくさいから…」

「This one and This one,please.(これとこれを下さい)And,May I have the same as that one?(それと、あれと同じものをもらえますか?)」

うららの母さんが指をさしながら言った。

「Sure.How would you like your steak?(わかりました。ステーキの焼き加減はどうなさいますか?)」

「Medium rare,please.(ミディアムレアで)」

「Sure. Which drink would you like?(かしこまりました。飲み物はどうなさいますか?)」

「飲み物は何がいい?」

「コーラで!」

うららと声が重なった。

「three coke,please(コーラを3つ下さい)」

「Sure.(かしこまりました)」

店員は去っていった。

「凄いですね…」

「ん?何が?」

うららの母さんはメニューを戻しながら言った。

「英語かっこいいな、って思って」

「いや、そんなことないよ。日常会話程度の英語ならホントに簡単」

英語って面白そうだな…勉強は嫌いだけど、英語なら…

ドタドタドタ!

俺と同じくらいの背丈の少年があっちから走って来た。サングラスをつけ、時計にブレスレット。アメリカの雰囲気を醸し出している少年だった。

「すんません!ちと遅れしもうた。君、となりよろし?」

俺の返事は聞かずに俺の隣に座った。

香水のにおいがする。

こいつが姫宮旭…!?

「遅いよ、旭ー」

うららは言う。

「ほんますまん!ちとバスケしてたら遅れてしもうた。あ、それで君が吉見遼か?なんかバスケうまそうな顔してんなー!よろしゅう頼むわ、俺、姫宮旭。小5で、遼とタメや」

「お、おう…よろしゅう…」

俺まで関西弁になってしまった。

「旭君は前まで大阪に住んでいたのよ」

旭は英語で手短に注文を済ませた後、俺に向かって言った。

「他人行儀にならへんでーな、遼!バスケしとる奴に悪いやつはいーひんのじゃ。硬くならんで、硬くならんで!」

最初なんか怖そうな人だと思ったけど、話してみると良い奴そうだった。

「お、おう!よろしくな!俺、まーいろいろとうららから聞いてると思うけど、吉見遼、っていう。小3からバスケしてるんだ!」

「俺も小3からや!大阪でミニバス始めたんや!こっちでは毎日ストリートバスケっちゅうもんをしとる!飯さっさと食い終わって、バスケするぞ!あんたと1on1がしたいんじゃ!」

ストリートバスケ…聞いたことがある。

アメリカのバスケは、ストリートバスケから発展していったと言っても過言ではない。

「おう!しようぜ!俺も飯さっさと食い終わる!」

「そんなら、どっちが早く食えるか競争や!」



それから5分間の沈黙-

うららはしきりに「アンタラ馬鹿じゃないの?」を繰り返し、うららの母さんはずっと笑っていた。

「ごちそーさま!」

同時にフォークとナイフをテーブルに置く。

「おっと、これは引き分けか…よっしゃ、バスケすんで!うららの母さん、金置いてくんで会計お願いします!お釣りはいらへん!」

旭は店外へ駆けだして行った。

「お、い、ちょっ!旭、待ってよ!」

俺も店外へ駆けだす。

「私も食べ終わってから向かうからねー!!」

うららは叫んで言った。



そのまま外へ出て、旭へ追いつく。

「遼、あんた走るの速いな!びっくりしたわ!」

「いや、そんなことねーよ!てゆか、ボールは?」

「ボール?そこら辺に転がってるからダイジョブや!」

俺は笑ってしまった。さすがアメリカだ…


歩いて走ってを繰り返し、15分くらいたったであろうか。

バスケのドリブルの音が聞こえてきた。

「ここや。ここは俺の兄ちゃんがてっぺん取ってるんや。やから俺らもやり放題だぜ?周りのストリートは大人ばっかりでな、俺らもやりづらいんや。やからサンフランシスコ中の10から16位のバスケの上手い連中が集まっとるで」

「てっぺん?」

「あぁ。ここももともとは大人が使ってたんだけどな、俺の兄ちゃんが5on5で勝ってここのコートの使用権を得たんや。俺の兄ちゃん、ほんま上手いんやで!高2やけど、ここのコートを狙って5on5を仕掛けてくる連中をいつも撃破しとる」

す、すごい…なんとも言えない雰囲気、オーラ。

色々な叫び声も聞こえてくる。沢山ボールが転がっていて、そこにいる子どもたちは自由にボールを使っているみたいだ。

「お、3on3が手前のコートで始まった見たいや。あいつも上手いで、特に今ボールを持っとる175位の選手。あいつは中1で、タイラーっちゅうんや」

4mほどのフェンスに囲まれた2つのコート。コートの地面は赤く塗られていて、アメリカの雰囲気をにおわせる。ゴールもきれいに使われているのか、ピカピカだ。さらに脇には部屋?みたいなのもあり、休めるようになっている。照明もついていた。

「ここの設備は全部俺らで買ってるんや。もちろん金は賭けバスケからだけどな」

説明を聞いているつもりだった。だが、その瞬間、俺はコートの方に目が行ってしまった。

「あそこの小屋では兄ちゃんの彼女が来たときは美味しいもんなんでも食えるんやで!今日は兄ちゃんも兄ちゃんの彼女もいない見たいやけどな」

俺はそんな説明耳に入っていなかった。タイラーが、今まさにダンクを決めようとしていた。

バコンッ!

「すっ、すげぇ…」

言葉にならなかった。初めて見た、生ダンク。

「あ?もしかして遼、あんたダンク見るの初めてなん!?」

「あ、あぁ…ダンクなんてテレビでしか見たことない…初めて見たよ、生で」

「ええええええ!?」

旭はあり得ないという風な顔をしていた。

「それならここは、刺激がつよいやろ。なんせみな、ツブ揃いやからな…」


そして旭はヘッドバンドをして、転がって来たボールを持つ。

「よっしゃ、やるか!」


旭はコートの中へ駆けだして行った。


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