第25Q 「懐かしの再会」
ハーフタイム。
次の準決勝で当たる天童中と王陵中がアップを始める。
自分のコート側でアップを始めていた中で一際目立っていたでかい奴がいた。
「あいつが神杉炎太か…どっちにしろぶっ潰す」
王陵のアップを見てみる。
メンバーが7人しかいないようだ。
大丈夫かよ、あの部…
その時、懐かしい顔を見つけた。
「おわ、あ!!!あいつ!」
「すみません、ちょっとトイレいってきますね」
「おう、でも早めに戻って来いよ。3Q開始3分前にはミーティング始めるからな」
和泉先輩は答えた。
俺は王陵側のコートへ急ぐ。
アップ時間が終わったタイミングで、後ろからこっそりついていき、肩を急に叩いた。
「うぎゃあ?お、お前なんやねん!って、お!!遼やないか!ひさしゅう!」
急に抱きついて来る。アメリカの癖は直ってないな。
「おう!いや、アップ見てたら懐かしい顔を見つけたもんでね。いやー、旭も変わってないようで何よりだわ。アメリカから帰ってきたの?」
姫宮旭は俺を上から下までじろりと眺めてから、こう答えた。
「そやな!小6の時エレメンタリースクールを卒業してから、父さんが日本に戻って、おばさんの所に住んだ方が良い、って言ったんや。それで、そのタイミングで日本に戻ってきたちゅーわけや。それにしても遼、デカくなったな!」
エレメンタリースクールね。思わず笑ってしまった。
「旭が成長止まったんだろ!身長いくつあんの?」
笑いながら答える。
「175cmや!成長してないってなんやねん。それでもでかくはなったんやぞ?そっちは?」
旭は大爆笑しながら答える。陽気な性格、さすが関西出身だ。
「180あるかないかくらいかな?」
「ほげっ!でかっ!うちの学校にもそんなでかいやついーひんぞ!?」
旭はびっくりしたように言った。
その時、また懐かしい声が聞こえてきた。
「うおっ!遼じゃん!ひっさしぶりー!」
振り返ると、また懐かしい顔がいた。
「ええええ!!うらら?ビックリした!なんでお前もいるんだよ!」
「なんでお前もとは失礼ねー!怒るよ?うちもこっちに小学校卒業してから帰ってきたんだよ?お母さんから聞いてないの?」
「いや、聞いてないわ!」
この女の方は皆川うらら。幼稚園の時からの幼馴染で、宮元小にも小2まで一緒に通っていた。うららのお母さんと俺のお母さんは同じ高校で、その縁からか幼稚園からずっと仲良くしていた。
だがこいつも親の転勤で、小2の冬休みアメリカへ渡ってしまった。
そこからは連絡は取り合うものの、なかなか会えずにいた。
会えたのもあの事が起こった小5の一回だけ。
まーあんな事があったから旭に出会えたんだけどな…
話は小5にさかのぼることになる。