第24Q 「ジャンプ力」
「で、どうなんだ?例の1年は」
余りに中学生にしては大きすぎる巨体の男に聞いた。
その男は答えた。
「あ?俺にセンターで叶うやつなんかいねーよ。ぶっ潰す」
その巨体の男の隣にいた少年は爽やかに笑った。
「ふはは、そうだな。炎太に叶うやつなんていねーよな。聞くのが間違ってたぜ」
「おうよ、小3までアメリカ仕込みの俺はちげーぜ?」
「おーい、準決のアップすっぞー、炎太、氷陵!」
「了解です」
炎太は返事をしなかったが、それに対し氷陵と呼ばれた男は爽やかに答えた。
会場は盛り上がっていた。
必死に追いすがる西成、そこから必死に点差を広げようと頑張る立修学園。
会場の観客は、準決勝ということで徐々に増えだし、盛り上がり始めていた。
「ここでタイムアウトは…?みんな疲れているし、ここで一度いれた方が?美奈さん?」
神宮寺は言った。
それに対し美奈子は、
「いや。要らないわ。こんな時は、流れに任せましょう。こんなところでタイムアウトをとったら、今のっているあの子たちを冷めさせることになるわ」
桜はそんな会話も気にせず、小さい体からは考えられないような声援を送っていた。
「落ち着けよ!点差を2ケタ差にはさせるな!ディフェンス、ディフェンスだ!」
和泉先輩の声が響き渡る。
「デーフェンス、デーフェンス!」
和泉先輩…佐藤先輩…
試合に出れなくて悔しいはずなのに、一生懸命声を出してくれた。
ぜってぇ、負けねぇ!
相変わらずローテンポかよ…ムカつくぜ…
心では落ち着こうと思っても、倫太郎、竜太郎コンビのローテンポの試合展開は俺には性に合わないようだ。
倫太郎は竜太郎にパス。そして竜太郎は上田と呼ばれていた奴にパス。そして上田は45度に下がってきた倫太郎にパスをした。
くっそ…なんなんだよ…
どっから打ってきても、ブロックしてやるよ…
倫太郎はトップの位置にいた竜太郎にパス。
そして小清水がポストアップした。
俺にポストアップか?舐めてんじゃねーぞ?
だか小清水は腰をいれてきた。
……ん?さっきより腰が低い!
少しずつズルズルと押し込まれる。
「遼!お前の力はそんなものかよ!」
くっそ…くそが…
そして小清水がフックシュートを打とうとした。
「舐めてんじゃねぇぞ!おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
バコンッッッ!
会場中に響き渡る鈍い音。
「すげぇ…」
思わず見とれてしまった。
「大我らしくねーな」
撥が話しかけて来る。
「い、いや。あのジャンプ力。あんなジャンプできるやつ、敵でもみた事ねぇよ。あいつは気付いてねーかもしれねーけど、あいつは異常だ」
撥は不敵な笑みを浮かべた。
大我が他人のプレイに圧倒されるなんて、珍しい…
それほど遼は凄いのか、と、思いながら…
ボールは榊先輩へまっすぐ飛んで行った。
「榊先輩!」
「まかせろ!」
2Q残り5秒。
1点でも差を詰めてやる!
俺はすぐにフロントコートへ向かう。
榊先輩がシュートを打とうとする…
いや、シュートじゃない?
パスだ!!!
俺の方向へボールが飛んでくる。
そのボールを空中で受け取った。
そしてダブルクラッチ。
ボールは観客の歓声と共に、リングへ吸い込まれた。
「ピーーーーッッ!!」
2Q終わりの笛が響き渡る。
22対28。
6点差!
逆転するぞ!