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バスケ道  作者: yama14
本編
34/72

第22Q 「流れ」

倫太郎は点を取られても落ち着いていた。


ダムダムダム―

落ち着いたドリブルの音が、立修学園の選手たちを落ち着かせる。

なんだ、この落ち着きは…

遼は点を取っても、不安をぬぐいきれないでいた。


倫太郎は自分で3Pを打った。


バコン!外れ、黒船先輩がリバウンドを取る。

榊先輩にパス。


必死にディフェンスをかいくぐる。1Gの榊先輩の負担は相当なものだろう。


「8秒バイオレーション!」

審判が笛を吹く。榊先輩は悔しそうな顔をしていた。これで立修学園ボール。



流れをつかみきれない。榊先輩は開始早々から疲労を顔に出していた。さらに黒船先輩も大変そうだ。黒船先輩は今日これで3試合目。顔には見せないが、汗の量が半端じゃない。丹原も春季大会では初出場。緊張していた。


倫太郎がまたゆっくりドリブルをつく。2Qは残り6分を切った。

このスローペース…いつもの西成のバスケが出来ないでいた。オフェンス中心のテンポの速いゲーム。最後はスタミナ勝負に持っていく。それがこのままではできない。

試合を相手にコントロールされているのはだれの目から見ても確かだった。


竜太郎へパスが渡る。

そして「小清水」と呼ばれている170cm位のセンターにボールが渡る。

小清水はゆっくりドリブルをついた。ディフェンスは引き気味でいいだろう。

だが小清水はゆっくりとシュートフォームに入った。

3P?嘘だろう?

だがもう時すでに遅し。

気付いた時にはボールを放とうとしていた。

くっそ、待てよ―

打たせるかよ!

「遼、待て!」榊先輩が叫んだ。

ヤバい!ファールを取られる!ただもう体は宙に浮いていた。

放たれたボールは、リングに当たりながらも吸い込まれていった。

小清水は俺にぶつかりながらそのまま倒れた。

「バスケットカウント、ワンスロー!」

相手コートが一気に盛り上がった。「4点プレイだ!」「うっしゃあ!」「小清水、ナイス!」


くっそ…くっそ…さっきのバスカンで、油断してた…

「焦るな、焦る気持ちが禁物だ!」

和泉先輩が叫んだのだが、その声も遼の耳には入ってこなかった。


小清水は落ち着いてフリースローを決めた。

このセンター、やるな…くっそ…


これで8対19。

流れを相手に持って行かれそうだった。


美奈さんがタイムアウトをとった。相手監督の高杉も、感心するほどのタイムアウトのタイミングだった。

「流れをあっちに持ってかれたら、この試合はそのままローテンポの試合展開で逃げ切られてしまうわ。吉見君。ボール運びできる?」

一瞬何を言っているのか理解できなかった。

「やっぱり榊君の1Gはきつかったかも。反省してる。ただ、この身長差はやっぱりついて行きたい。

黒船君は3試合も戦って疲れているし、丹原君も初めての試合だし。長瀬君はそもそもドリブルが苦手。吉見君、出来る?」

マジで言っているのか…

ただ、負けたくない。勝ちたい。勝つためなら何でもする。

「分かりました」

小清水もびっくりするだろう。俺がボール運びするなんて思っていない。


試合が再開した。

バックコートに向かった俺を見て、小清水は驚いていた。

簡単にボールが俺へ渡った。

クロスオーバーからのビハインド。一気にドライブして自慢のスピードで抜いた。

フロントコートへ簡単にボールが渡った。すぐに榊先輩にパス。

西成ベンチは大盛り上がり。

「ナイス、遼!」「吉見君、さすが!」

俺はすぐにハイポストへ入る。榊先輩は倫太郎のディフェンスむなしく、すぐにパスをポストへ入れた。

すぐに黒船先輩が走りこんできた。ハイポストからローポストへ。ハイ、ローの連携が決まった!

そのままゴール下。

バスッ!

「よっしゃあ!」

黒船先輩とハイタッチ。

これで10対19。


ただ、倫太郎の落ち着いたペースは変わらない。

また、3Pを打とうとした、その瞬間だった。

「なめんじゃねぇぞ!」

俺の体は、勝手に動いていた。榊先輩の上を通り越したボールを、ブロックした!

バコン!

「ウソだろ…!?」


「うわぁぁぁぁぁ!」

会場全体が盛り上がる。


倫太郎はすぐにボールを獲得しようとしたが、榊先輩はリスタートが速かった。

「行っけぇ!」

美奈さんが叫んだ。

そのまま榊先輩がレイアップ。


12対19。


「ボール見ろ!」

和泉先輩が叫んだ瞬間、ボールはロングパスで一気に竜太郎へ渡った。

3Pラインの外側で、竜太郎はシュートを放った。

ピュルルルル、バスッ!

ファストブレイク、やられた―

くっそ…


12対22。

「油断しないで!流れをつかんで!」

美奈さんが叫ぶ。


またも俺がボールを運ぶ。そして今度は榊先輩にパスせずにそのままドライブした。

「ヘルプ!」小清水が叫ぶ。

目の前には竜太郎と倫太郎が居た。

「おりゃあああああ!」

力ずくでゴールへ向かった。

苦し紛れにシュートを放った瞬間、笛が鳴った。

ボールはリングに当たり、宙に舞った。

だが宙に舞ったボールはそのままリングに吸い込まれた。

「バスケットカウント、ワンスロー!」

「うっしゃあ!」

榊先輩とグータッチを交わす。


「ワンショット!」

気持ちよかった。バスケって、やっぱ楽しい!

深呼吸して、ボールを放った。

バスッ!

これで15対22。



この流れ、つかんだ!

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