第20Q 「dream brothers」
朝、吉見遼は目を覚ました。
昨日の事実を聞き、家に帰ってから落ち着いて家族と話し合った。
もちろん、まだまだ受け止めるには時間がかかるのかもしれない。
ただ、最後に、父さんが言った言葉は、家族を笑顔にさせた。
「俺らは名ばかりの家族じゃない。家族のきずなで結ばれた、俺にとって大好きな、そして世界で、いや宇宙で一番大切なものだ」
最後、みんなで笑いあったのは、本当に良かった。
そうだ、今日は朝から試合だ。行かなければいけない。昨日のキスを思い出して顔をほてらせながら、準備を始めた。
朝ごはんをいつものように食べた。家族はみんな、変わってなかった。良かった…
家族みんなから頑張れよと励まされ、俺は家を出た。
すると、考えられないような光景があった。
バスケ部のみんなと、神宮寺先輩、桜と、美奈さんが家の前で待っていたのだ。
「え…?どうしたんですか…?」
驚きを隠せなかった。
「どうしたもこうしたも、お前を迎えに来たに決まってるだろうが。昨日色々とあったしな」
和泉先輩が言った。
「昨日、バスケ部みんなで俺らを探してくれたらしい。風間の呼びかけで」
榊先輩が照れながら言った。
そんなこと誰も言っていなかった…知らなかった…
「おまえら、これから迷惑かけんなよ?このつけは大きいぞ!俺らだって、お前らに抜けられると大変だからな。お前らがいねーと始まらねーよ」
和泉先輩が言った。
「す、すいません…」
「ま、こいつとキスしてたことは見なかったことにしてやる」
和泉先輩がいたずらに桜の方を指さしながら言った。
「ええええええええ!?何言ってるんですか!?」
2人の声がシンクロした。
「お似合いだよ。2人とも」
神宮寺先輩が言うと、バスケ部が一斉に冷やかし始めた。
「まあ、偶然その現場を丹原が見ていたんでね~」
笑いながら和泉先輩が言った。
怒りがふつふつと沸騰した。
「おいこら恭介!なに盗み見してんだ!」
「わ、悪かったって!けどあの状況で声かけづらいだろ…」
恭介を少し(本当に少しだ)懲らしめた後、和泉先輩が、
「まぁこれはバスケ部の中では開口厳禁だな」
と言ってくれたので、少しほっとした。
「おまえらは、夢のある兄弟なんだ。それを自覚しろよ。うちのWエース!」
「は、はい!」
声が重なった。
そして榊鉄平と吉見遼―
2人の血のつながった兄弟は笑いあった。
俺らはぞろぞろと、俺らが兄弟だということをいじられながら(愛のあるいじられ方だと思っておく)、今日の決戦場へ向かった。
そして最後に和泉先輩が叫んだ。
「うっしゃ、2人もそろった!もう勝つ条件はそろった!今日も、勝つぞ!」
「おう!」バスケ部全員の声が爽やかな朝にシンクロした。
これから、西成中学校バスケットボール部、真の戦いが、始まる―
ここまでは、もともと決めていた設定でした。
とりあえず、ここまで来れてホッとしている作者です。
これからは春季大会を思う存分に書いて行きたいと思います^^