第5-2Q 「決意」
第5Qと第6Qの間のストーリーです。
「ただいま」
見慣れた玄関に足を踏み込む。いつものようにお気に入りの黒を主体とした靴を脱ぎ、リビングへ入った。
「おかえり」
と自分の母・吉見杏が言う。「杏」何ておしゃれな名前、良く自分のおばあちゃんはつけたなと思う。
椅子にすわって勉強していたのは、1個下の小6の妹、吉見玲奈。いつもケンカばかりしている。玲奈も女子のミニバスに入っている。玲奈も西成中に入る予定だ。
「父さんは帰ってきてないの?」
「うん」
「バスケ部どうだった?」
横から口を挟んできたのは玲奈だった。
「良かったよ。強そうな奴いたし。今日の2年との試合勝ったし」
「ふ~ん。西成の男バスは兄ちゃんが見てみるとどうなの?強いの?」
興味がある目をしている。やはり自分が入学する予定の学校の情報は知りたいのだろう。
「強いよ。特に今日戦った2年の榊先輩はヤバかった」
「女バスいた?」
「今日は俺ら第2体育館でやったし、女バスは今日第1体育館でやったらしいから知らん」
「あっそ」
俺は顔を母に向けた。
「中体連優勝できると思う。あのメンバーなら」
「ホントに?」
母はびっくりしたような顔をした。
「じゃあ期待してるわ」
「うん」
自分の家族は5人家族。父の雄介、母の杏、俺、そして1個上の姉、杏奈、そして1個下の妹、玲奈。
父はバスケ実業団の監督。母は普通の主婦。莉奈はバドミントン部で西成中。小学生までは杏奈もバスケをしていた。そして妹の玲奈はミニバスをしている。
いたって普通の家族だ。両親は優しくて、自分はファザコンやマザコンでもないが好きだ。
父の雄介はインターハイ優勝を経験している。その後大学でバスケをしたが、怪我で引退。その後実業団の監督となった。将来は全日本の監督もうわさされている。試合はいつも見に来てくれて、的確なアドバイスをくれる。
その後玲奈と一緒にバスケの動画を見ていると、父が帰って来た。
すると開口一番、
「どうだった!?西成中の男バスは?」
「いや、中体連優勝できそうだよ」
「ホントか!?期待できるな」
心底喜んでいる笑顔だった。
こうやって父とバスケの会話をしている時が楽しかった。
「どんな奴がいた?」
興味シンシンで聞いてきた。
「まず2年の榊先輩って人が強い。3Pバンバン入るし、シュートフォームもきれいだし。今日2年と試合やったんだけど、榊先輩がいて負けそうだった」
「春季大会スタメンとれよ」
「絶対取るから大丈夫」
「いいか、このバスケットボールは、お前に色々な事を教えてくれる。辛いこと、楽しいこと―大人になるための色々なことだ。バスケットボールが与えてくれたこと、それを乗り越えれば、真の大人になれる。このバスケットボールには、夢がたくさん詰まっているんだ」
「はいはい、もう聞きあきた」
このセリフは父さんがいつも言う。まぁ言っていることは正しいのだが。
今日西成中を見ていて思った。これならいけると。雲仙第三とか、天童などの強豪校よりは練習が必要かもしれないけれど、中体連優勝できると。やりがいは人一倍だ。
俺は安心した。その日はゆっくり眠ることが出来た。
朝、一緒に学校に行くことにした恭介が家の前で待っていた。
「これからよろしく!」
とぼとぼ学校へ歩いて行く。
「それにしても眠いな」
「ああ」
「昨日完全燃焼したもんな」
「ああ」
会話が全くと言ってはずまなかった。
「おい!」
急に恭介が言った。
「絶対中体連優勝しような!」
その言葉を聞いて、俺の眠気は吹き飛んだ。
「お、おう!」
「ぜってぇ中体連優勝するぞおおぉぉぉぉぉぉ!!」
道路を叫びながら走っていた。
周りから変人に見られたのは言うまでもないが、その言葉で決意が出来た。
絶対中体連優勝、するぞ!
と、その時。
バシッ!
恭介が転んだのが見えた。
「あ~あ、バカだ」