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バスケ道  作者: yama14
本編
11/72

第1Q 「入部」


「え~と、君、誰?」

その声を無視し、その少年はリングにボールを入れていく。

「ていうか、あいつさ、宮本小の吉見じゃね?」

「は、嘘つけ。こんな弱小校に来るわけないじゃん」

だがその少年のシュートフォームは白鳥のように美しく、西成中バスケ部員はその姿に見とれてしまった。

「けど、あいつ見たことあるな」

「確かに。やっぱり吉見じゃない?」

バスケ部員の色々な憶測が飛び交う。

そして西成中キャプテン、和泉大我はその少年にこう聞いた。


「え~と、君の名前は?」


するとその少年はこう言った。

「吉見遼、1年です!ポジションはセンター希望です!」


「ええっ!?」「マジかよ!?」「ヤバくね?」「ウソだろ」というような声があちこちから飛んでくる。そしてその周りにはいつのまにか人だかりが出来た。


だが一人だけ冷たい目線で遼を見ていた人がいた。

その少年は、こう言った。

「で、何?うちのバスケ部に冷やかしに来たわけ?」






「ごめんね~あの子、プライド高くってさ」

西成中バスケ部顧問、吉田美奈子は言った。

「いえいえ、大丈夫っすよ。それにしても、吉田先生は何歳なんですか?」

俺は吉田先生に聞く。それにしても若い。20代前半か?

「え、26歳だけど・・・それがどうかした?」

26歳!?26歳とは思えない美貌だった。

「いや、若いな~って思ったんで」

本心から俺は言ったつもりだ。

「そうか、そうか!今年の1年生は最初から上手いなぁ!まあまあ、私が綺麗なのは分かってるんだけどね?見とれちゃ駄目よ、吉見君!」

「アハハハハハ…」

笑うことしかできなかった。

すると吉田先生は思い立ったように、

「あ、自分のこと吉田先生って呼ぶのやめてね!恥ずかしいし、自分先生って感じじゃないし・・・バスケ部の子には、美奈さんって呼んでもらってるから、そう呼んで」

恥ずかしそうにそう言った。


「それにしても、なんでこんな弱小校に来たの?」


美奈さんは俺に素朴な疑問をぶつけた。

すると俺は堂々と言った。


「最初から強いところ行っても、面白くないんで。チームを優勝に持って行けた方が、かっこいいし達成感あると思うから」


美奈さんは、ポカ~んと口をあけながら、こう言った。

「それだけ?」

「え、それだけですよ」

「バスケなんで始めたの?」

また俺は堂々とこう言った。


「好きだから」


また美奈さんは、ポカ~んと口をあけながら、こう言った。

「それだけ?」

「いや、バスケ好きって、理由になりませんか?」

「いや、そんなことないけど・・・」

バスケ部に一秒でも早く入部したかったので、書類を手元に引き寄せ、鉛筆を手にした。

「この書類に書けばよいんですよね?」

「あ、うん。後担任の許可も貰っといてね」

俺はそそくさと書き始めた。

「美奈さんって女バスの顧問もやってるんですか?」

「え、そうだよ」

「ふ~ん、そうすか」

俺は落胆した。練習をずっと見てもらえないなんて、嫌だと思った。

だけど、この道を選んだのは自分だ。

練習を見てもらいたければ、あの誘われたバスケの強豪校、「雲仙第三中」に行けばよかったのだ。




俺は小3からバスケを始めた。バスケの才能があったのか、バスケを始めてからめきめきと上手くなった。飽きっぽかった自分は、数カ月で辞めると思っていたのに、どんどんうまくなっていく自分が信じられなかったが、あまりにもバスケが楽しすぎて、数ヵ月後には辞めると思っていた自分が逆に信じられなかった。


そして小6の時、ミニバスの全国大会で優勝した。優勝したといっても、ミニバスの全国大会は優勝チームが4チームもあるから、完全な一番ではなかったのだけれど。


そして小学校を卒業する時、俺はあの強豪校、「雲仙第三」に入らないかと誘われた。

だが俺はその誘いを断った。みんなにはどうして断ったんだと何回も聞かれた。その事を宮本小ミニバスケットボール部副キャプテン・東條翔に言ったら、バカにされて大喧嘩をした。その時に、もう1つある大きな出来事もあった。だからその時から大親友でいっつも二人でコンビを組んでいたあいつとは口を一切聞いていない。大親友にまで馬鹿にされたこの事は、ついに世間にまで広がった。世間はミニバス界で注目された俺を見放したのだ。こんな弱小校に行っても、意味がないと。もうこいつは終わったと。けど俺は最初から県大会で優勝が当たり前の強いチームに行っても、優勝する喜びや達成感がないと思ったから断ったのだった。その信念は、絶対に曲げなかった。


そしてその時からこう思ったのだ。

「弱いチームを自分の力で優勝に導いて、バカにした奴らを見返したい」と。



「おい、お前うちの部に入ったのか?」

「あぁ、そうだけど」

さっき、「冷やかしに来たのか?」と言ったあの少年だった。

「俺、丹原恭介。一年。春休みから入部した。まだうちのバスケ部には一年はお前を含めて二人しかいない。だからよろしくな」

さっき言ったことを忘れたのか?とは思ったけど、こんなこと言っても意味がない、そう思ってまぁいいやと自分の心の中で片づけた。

「おう、よろしく!」

力強い手で丹原の手を握った。

「痛い、痛いよ!さっきのこと恨んでんだろ!けど仕方がねぇだろ、春休みから一年が少ないバスケ部を冷やかしに来るバカな連中がたくさんいるから。この学校、部活入る奴はだいたい春休みらしいから」

「そうなの?まぁ、よろしく。あ、友達の証としてみかんあげるよ」

みかんを丹原の顔面向かって投げた。

「あぶねっ!お前もこんなことするなんて馬鹿か?」

「いいじゃん、おいしいんだから」

「そういう問題じゃないから」

そして二人は笑いあった。そしてメアドを交換した。

「それにしても、お前うまいの?」

「俺?俺は笠原小から来た。うまいよ」

ここまで堂々と上手いよと言うやつは初めて見た。だが堂々としていて、逆に良い奴だなと思った。

「うまそうな顔してないけど」

するとみかんが自分の顔向かって飛んできた。

「顔だけだ。バスケしてるとこみてもらえればわかる」

「ふ~ん、楽しみにしてるよ。ほら、みかん」

「ああ、もらっとくよ」

「んじゃな」

俺は校門向かって歩き出した。

「あ、練習明日からだからな。覚えとけよ」

俺は右手を上げ、振り向かないで「了解!」と言った。



こうして俺の中学バスケ生活が始まった。






これからよろしくお願いします。


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