Brave 2-9
研究が始められて数週間でかなりの成果が出始めていた
そしてその成果の集大成が暗黒封晶を一定時間ではあるが無効化できる物質
『精霊の水晶』
この水晶から放たれる特殊な光線が暗黒封晶の光を遮断してくれる
しかしテルペシアの魔眼ほどの威力は無く
一定時間を過ぎてしまうと水晶は砕け武神降臨も出来なくなってしまう
それでも今はこれでも必要不可欠なものだった
すぐに大量生産に入りたい所では在ったが
この精霊の水晶を作り出すにはテルペシアの魔眼のエネルギーが微量とは言え必要である
微量とは言え魔眼の長時間や連続発動は魔眼にもその所有者にも大きな負担になる
まだ幼いテルペシアでは耐え切れない負担である為
水晶を作れるのは1週間に2~3個程度が限界であった
ロザリアとの約束もありこれ以上数を作ろうとすればテルペシアの命に関わる
約束云々は置いて置いたとしてもこればかりはジュリアや他の隊員達も嫌な事だった
「ふな~……今日も疲れたダネ……」
ぐったりした表情でテルペシアはロザリアの宿舎に帰ってきた
「大丈夫か……?」
ぐったりしたテルペシアを抱きかかえベッドに横に寝かせる
「大丈夫ダネ~でももう寝るダネ」
そう言ってテルペシアはぐっすりと眠りについた
最初はテルペシアとの生活に戸惑っていたロザリアだったが
今では我が子のように愛を注ぎ楽しい日々を送っている
そんな自分の娘的存在であるテルペシアがいつもこんなになって帰ってくる姿を見るのが
今のロザリアにとってもっとも苦しく辛い物であった
それでもテルペシアが決断した事をロザリアに止める権利は無い
それを分かっているのかロザリアは何も口にせずせめてテルペシアが元気になるように
色々と良い食材を買い込み
慣れない手つきでは在るが料理を作っている
そして次の日
「おはようダネ……」
物凄く眠そうな顔をしたテルペシアが起きて来た
台所の方から何やら美味しい香りが漂いそちらに向かって行くと
美味しそうな料理が沢山テーブルに並んでいる
「これは凄いダネ!!!」
眠気が吹っ飛んだのかテルペシアは椅子に座るなり料理を食べ始める
そんなテルペシアを見てロザリアから笑みがこぼれる
「どうじゃ?あまり料理などしたことが無いのでな
あまり自信は無いのじゃが」
そんな不安もテルペシアは元気いっぱいの表情で打ち消してくれた
「大丈夫ダネ!物凄く美味しいダネ!!!」
「そうか」
微笑んでくれたテルペシアに精一杯の笑顔で返すロザリア
朝食を済ますとテルペシアはロザリアに連れられて本部の研究室に向かう
「おや!これは珍しい!」
研究所にロザリアが入ってくるのを見たマサイアスが驚いた表情でロザリアを見る
それもその筈
最後の最後までテルペシアの人体実験に反対の意を示していたロザリアが
その人体実験の行われている研究室に来るのはこれが初めてだからだ
「まあ……テルペシアがどんな実験をしているのかが見たくなってな」
「それは構いませんがね」
マサイアスはテルペシアにゴーグルのような物を装着させる
「それは何じゃ?」
不思議そうにゴーグルをみつめるロザリアに説明をする
「このゴーグルは魔眼のエネルギーを計測し吸収する装置です
本来なら魔眼暴走者に使用する物ですがね」
魔眼暴走者とは魔眼を酷使し魔眼に飲み込まれてしまった者をあらわす
強力な能力にはそれ相応のリスクが伴うが最終的に行き着くのは
魔眼に全てを取り込まれて暴走者になる結末のみ
「さてテルペシアさん始めますよ?」
「宜しくダネ!」
パソコンのスイッチを入れるとゴーグルが緑色に輝き線を伝い魔眼のエネルギーが
1つの水晶へと流れ込んでいく
その水晶こそ精霊の水晶となる原石であった
ロザリアは居ても経っても居られず思わずテルペシアの手を握る
自分の事を心配してくれるロザリアにニコリと笑いかけるテルペシアだった