神様と就職先
なんでもあり。
「輪廻転生したくねぇ…、死にてえ〜」
「だから死んどるんだ、貴様は」
俺の呟きに、神様が怪訝そうに返事をした。
ここは天界。
俺はどうやら死んだらしくて、気づいたらここにいた。
そして、この目の前にいる神様に、次の生きる場所を決めるようにせがまれている。
「生きるのって、面倒くさいんですよ。もう一回なんて、耐えられません」
キッパリ言い切る俺に、神様はどうでもよさそうに書類を渡してくる。
「貴様の魂の消化が終わっとらん。さっさと、輪廻転生先を選べ」
「なんですか、魂の消化って」
「魂の生きる力みたいなもんだ。それを使い切って、はじめて天国か地獄で暮らせる。残量が残っている限りは、ずっと輪廻転生だ。ほら、行って来い」
「えええ〜、そんなシステム知らねえ〜」
俺は書類を受け取らず、駄々をこねて、ぼふりと雲の上の大の字になった。
ここだって、人が想像する天国みたいなのに、違うというのか。
ここにずっといさせてくれないかな。
「怠惰な魂だなぁ…。お前みたいな奴ほど、魂の残量が多いよな」
神様が俺を上から覗き込むながら、退屈そうに答えた。
「げっ、なんですかその嫌がらせ」
「嫌がらせなもんか、ただの試練だろ」
「余計なお世話だあ〜!」
「大体、生きるのが面倒だというが、貴様は次は何になれると思ってるんだ」
神様の声に、俺は眉間に皺が寄った。
「えっ?また人間なんじゃないですか?」
「傲慢な魂だなぁ。生き物になるだけで、人間とは限らん。だから、さっさと行って来い」
「えっっ、人間じゃないんですか!?」
俺は、勢いよく体を起こした。
人間じゃないって、なんだ?
神様は俺を見下ろしながら、当たり前だと頷いた。
「アメーバかもしれんし、フナかもしれんし、銀杏かもしれん、それは輪廻転生してみないとわからん」
「……なんで、フナと銀杏チョイス…?」
「お前さんの前の人間がフナになって、その前の人間が銀杏になったからな」
「まじかよ……。それ、どういう基準なんですか?」
「基準も何も、足りないところへ埋まっていくだけだ。なんだ、生きるのに理由があるとでも思ってるのか?」
「つ、使い回し…。聞きたくなかった…」
俺はもう一度、雲の上に横になった。
あーあ、生きてても面倒、死んでも面倒。
じゃあ、もうここにいてもよくない?
「やっぱり、輪廻転生したくないです」
「じゃあ、地獄で働くか?」
「…今、なんと?」
「地獄で働くかと訊いた」
「なんで!?」
俺の声が大きかったからか、神様は顔を顰めた。
その、人をナメクジを見るみたいな目、やめてもらえません…?
あ、次はナメクジかもしれねーのか。
なんか、死んだばっかりなのに、つらくなってきたかも。
「人手不足だからな。貴様みたいに面倒な輩を、獄卒として見張るという手段なら残っとるぞ」
「それ、魂は消費されるんですか…?」
「されん。手当ては出る」
「というと?」
「限りなく希望に近い輪廻転生先を用意してやれる」
「そ、それはっ、裕福な家の飼い猫とかも可能なんですか!?」
「ピンポイントは難しいが、少なくともランダムに飛ばされることはないぞ」
「どこかの家の飼い猫がいいですっ!」
「働き次第だな」
「じゃあ、働きます!」
俺がそう答えると、神様はなんでもないように書類を仕舞って、向こう側を指差した。
「就職先は向こうだ。他の獄卒が面談してくれるだろうから、正直に説明してこい。それで採用だ」
「わっかりました!」
俺は立ち上がって、神様にお辞儀した。
「んじゃ、失礼しますっ!」
「次にここに来た時は、素直に輪廻転生しろよ〜」
「げっ、また来るんですか、俺」
「魂の消費が足りないだろうからな」
「獄卒が良さげだったら、また就職します…」
それだけ言い残して、俺は地獄へ向かった。
「やれやれ、あやつまた就職しに行ったぞ。奇特な魂め」
神様の呟きは、俺には届いていなかった。
了
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217日目。




