第8話 二人の討論タイム
「すごいことになっている……」
翌朝、通知欄を見て私は驚いた。
なんて事のない風景がバズった時もだけど、何がみんなの琴線に触れているか分からない。
私の考察はそんなにすごかったのかな?
ひとつずつリプライを見ていく。
大体が肯定的なものだったけれど、たまに自分の考察と違うものがあって興味深かった。
「こんな考えの人もいるんだなぁ」
はへー。なんて、やる気のない声を出していると、彼女と糊さんからもリプライが届いているのに気が付いた。
二人とも、わかる、の一言だけ。
なんだかおかしくて笑ってしまった。
朝ごはんを食べたたら続きを読もう。
なんてったって今日は土曜日。
遅めの朝食が許されるとはいえ、あんまり遅いとお母さんに食器が片付かないと怒られてしまう。
のんびりとトーストに最近のお気に入り、塗るとメロンパンの味になるっていうクリームを塗っていく。
そこで先日糊さんが朝食を載せていたことを思い出した。
私も撮ってみようかな。
メロンパンクリームをメインにパシャリ!
「遅めの朝食に最近のお気に入りメロンパンクリームを添えて、っと」
SNSに載せる。
うん。なかなか食欲湧き立つ構図。
すぐに糊さんからリプライがきた。
「美味しそう」
「美味しいですよ!メロンパンクリームおすすめです」
些細なやり取りでも繋がっているのが嬉しい。
やっぱりSNSはやめられない。
「やっと起きてきた。早く食べちゃいなさい」
「はぁい」
もぐもぐ咀嚼して、昨日ミルクティーを作るために購入した牛乳で飲み込む。
うん。美味しい。
「ごちそうさまでした」
食器を流しに置くと、お母さんが何も言わずに溜まっていた洗い物を洗い出した。
本当は私がやった方がいいとは思いつつも甘えてしまう。
さて、原作本の2周目いきますか。
私は自室に戻ってまた一巻から読み直した。
一周目では分からなかったことも、#二周目考察のタグをつけて感想を述べていく。
通知がまた鳴り出したけど知らんぷり。
私は今、この本を読むのに忙しいんの。
推しが出るとやっぱり感想は荒ぶるし、重要なシーンでは冷静に考え込んでしまう。
SNSは気楽だ。
思ったことをそのまま言葉に乗せて呟く。
「はー!面白かった!」
また最新刊まで読み終わると、スマホに手が伸びる。
SNSを開いて、増えている通知にざっと目を通す。
返信は基本的に相互さん以外しないようにしている。
糊さんがまた#二周目考察のタグの考察にも反応してくれて、自分の意見を述べてくれている。
私とはちょっと違う意見。
「どう返そうかな」
私はこの先の展開はこうなると思う。
そうリプライしたら横から知らない人がリプライしてきた。
本誌ではこうなります、だって。
いや、誰だよ。
そう思って、一言だけ「そうなんですか」だけ返してスマホを握りしめる。
単行本の情報だけじゃ遅いんだなぁ。
でも、単行本とアニメ二期しか見ていないって書いてあるのに本誌の話を出してくるのはずるくない?ってぐるぐるしていたら糊さんが、本誌の話題をしてきた人に言ってくれた。
「今は俺との討論タイムなんで」
だって!
そこから今後の展開予想討論大会が始まった。
二人だけのタイムライン。
そこでふと、糊さんの推しが気になった。
本作でも地味めな子をよく話題に出しているからもしかしてって思って尋ねたら大当たり!
糊さんの予想を当てられてはしゃいでいたら、次のリプライで一気に気持ちが萎んだ。
「気になっている子に似ているから」
気になっている子。
そっか。糊さんにもそういう人、いるんだ。ふぅん。
なんだか怒りのような、寂しいような気持ちで私はなんて返せばいいのか分からなくて、返事をする事ができなかった。
帰ってくる言葉が怖かった。
これがSNSでよかった。
糊さんの顔を見なくて済むんだもん。
でも、SNSなのに、確かに糊さんは私にとって特別な人なのに、なんでこんな嫉妬じみた感情を持つんだろう。
私は分からなくなってスマホと一緒にベッドにダイブした。
シーツが温もりをなくして冷たい。
返せなかったリプライ画面を消して、そっと二度寝に徹した。
もうやだ。




