第7話 テストと考察
「おはよう」
毎朝の習慣。
でも、変化が訪れた。
「おはよう!」
今までなら誰からも返されなかった挨拶に、返してくれる人がいる。
それだけで嬉しい。
今まで一人でいたけれど、彼女の友人達のグループに入れてもらって話すことも増えてきた。
リアルで同年代と話すのってこんなに楽しいんだ!
SNSで見知らぬ人と繋がるのも楽しいけれど、リアルでこうやって話し合えるのも楽しい。
「今日は一限から数学なんだよね、鬱」
「私は数学そんなに嫌いじゃないけどな。答えが合っていた時、パズルのピースが当て嵌まったみたいな感じしない?」
SNSでは身バレ防止に学生だってことすら書いていない。
だからこんな話、初めてする。
リアルも悪くない。
そう思っていたけれど、最近糊さんがタイムラインに現れない。
「もうすぐテストだし、勉強しなきゃね〜」
「そうだね。頑張ろう」
私もSNSにばかりかまけていないでテストを頑張ろう!
リアルを疎かにしない。
これが楽しくSNSをする私のルール。
まあ、少し前まで友達もいなくてぼっちでルールも何もないんだけれどね。
……糊さんも、学生でテストで浮上出来ないとかかな?
少しの疑問は私の中でむくむくと膨れ上がった。
その日の晩。
ノートとシャーペンの写真を撮って「勉強」とだけ呟いた。
これで学生だってわかるかもしれないけれど、社会人で資格試験の勉強する人も多いもんね。
それに無地のノートからは情報量も少ない。
「さて、勉強しますか」
ノートと教科書を開いて勉強をしていると、糊さんからリプライが届いた。
「頑張って」
その一言が嬉しい。
「頑張ります!」
こちらも返して、今度こそ集中する。
その夜は、とても清々しい気持ちだった。
「テスト発表緊張する〜」
「ははっ」
「それは余裕の笑みですか、優等生さん」
「優等生じゃないよ、一生懸命勉強しただけ」
そう言うと頭を抱えられた。
「どうせ!どうせ勉強に飽きて原作本一気読みしてましたよーだ!」
「あ、そう。それ。テスト終わったら原作本貸してくれるっていうので頑張りました」
「ぜひぜひ。実は今日、持ってきてるんだよね。あなたの推しが大変なことになるところを見て悶えるがいいさ!」
「ええ〜!気になる〜!」
なんて言い合い、以前の私なら絶対に出来なかった。
SNSでも、このジャンルに触れて考察とかしてみたらフォロワーさんが増えて、アニメ二期しか履修していないって書くと、原作を読んでほしいってリプライをたくさんいただいたので今回借りてみることにした。
推しが大変なことになるっていうのは気になるけど、アニメも続きを見たい。
悩ましいな。
そういえば、ミルクティー貯金として少しずつ貯めていたお金も結構な金額になってきた。
ミルクティーさんに初心者でも美味しく淹れられる茶葉を尋ねて優雅に原作本を読んで過ごしてみようかな。
「あ、貼られてる」
「どれどれ」
私は頑張った甲斐があって十位以内に入れた。
「……下から数えたほうが早い」
「ドンマイ!次頑張ろう!」
「教えてください!先生!」
「えぇ……」
困ったな、と思っていると、一位の名前が目についた。
入学式でも新入生挨拶をして、それからずっと一位の男子。
この間、スマホ片手に慌てていたから普通に見えるけどとても頭がいいんだよね。
「私ももっと頑張らないと」
「えー!これ以上!?」
「勉学に終わりはないのです」
舌を出して軽口を叩く。
そのまま放課後になって、原作本を受け取って、ミルクティーさんから教えてもらったスーパーでも買える安めの茶葉を教えてもらって買って帰った。
こちらのお財布事情を分かってくれていて助かる。
手鍋に水を入れて沸騰させ、茶葉を入れて火を止め、フタをして2~3分蒸らした後、牛乳を加えて軽く混ぜ、再び全体が温まるまで弱火にかける。
沸騰直前に火を止め、茶こしでこしながらカップに注いだら出来上がり!
私でも出来る簡単な方法を教えてくれてよかった。
自室に戻って写真を撮る。
「@ミルクティーさんに教えてもらってミルクティーを作ってみました。」
そう呟いて、少し冷まして一口飲む。
美味しい!
その時、スマホから通知音が鳴った。
ミルクティーさんだ!
ミルクティーの写真付きで美味しそう!ってリプライをくれた。
ミルクティーさんのおかげです!って返して、手は漫画へ。
私の推し、どうなるのかな。
一巻ずつ考察じみたことをして、呟いていく。
時には長文になる。
どうしよう。私の推しが格好いい。
ミルクティーを合間に飲みながら、明日が休みでよかったと思った。
平日じゃこんな夜更かし出来ないもんね。
でも、最新刊で私の推しがとんでもないことになって、彼女の言うことがわかった。
続きが気になる〜!!
思わず考察も長文に長文を重ねてもう呟きどころじゃなくなっていく。
「はぁ……」
明日はアニメ見よ。
スマホを消音モードにして、ベッドに入る。
その時の私は、写真がバズるくらい私の考察がバズっていて、翌朝の通知とリプライがとんでもないことになっていることは夢にも思わなかった。




