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第6話 初めてのリアル

ぬい活沼さんから勧められたアニメの二期を見終わった頃、偶然通りかかった商業施設のガチャガチャコーナーでその作品の推しキャラのぬいぐるみマスコットを見つけた。

「あ、あった」

とりあえず台を取って、400円を入れて回していく。

最近のガチャガチャって高いよねぇ。

一回で来てくれますように!

願って出た子は、人気だけれど私の推しじゃなかった。

近くのモール内のベンチに座ってぬい活沼さんに報告する。

すると、意外な提案をされた。

「交換を探すといいよ」

「交換……」

なんでも、自分の推しとの交換はよくある事らしい。

グッズ界隈って奥が深い。

「でも、知らない人に自分の住所を知られるのが怖いです」

DMで送ったら、なら直接会う方法もあるよ、と教えられた。

直接会う……それもなんだか怖いな。

そう思っていたら、私がしたガチャガチャに挑む人がいた。

同じクラスの、女子生徒。

真剣な表情だ。

祈りを込めるかのようにゆっくりと回していく。

いつの間にか私も食い入るように見ていて、彼女の推しが出ますようにって祈っていた。

けど、肩を落とした彼女を見て、ああ、推しじゃなかったんだなぁと思う。

私は手元のぬいぐるみマスコットを見る。

彼女はまだ落ち込んでいて、やがて両替機に向かってもう一度回していた。

また肩を落とす。

私はスマホを握りしめて、勇気を出して声を掛けた。

「あの……」

「あ、同じクラスの……」

「うん。あなたもこの作品が好きなの?」

「うん」

こくりと頷かれる。

「どの子が推しなの?私はこの子が欲しかったんだけど、こっちの子が出て」

そう言って自分が当てたぬいぐるみマスコットを差し出すと、女の子は叫んだ。

「あー!私の推し!!」

「本当?」

「あの、あなたの推し、さっき当てたから交換しない?」

「本当に!?嬉しい!ありがとう!」

そっとぬいぐるみマスコットを交換し合う。

お互い満面の笑みだ。

「そうだ、報告しなきゃ」

ぬい活沼さんに、偶然会ったクラスメイトに交換してもらえましたって写真付きで送ると、すごく喜んでくれた。

「あの、あなたもこの作品が好きなんだよね?よかったら話しない?私、リアルで話ができる相手がいなくて……」

私はこの提案にすぐ飛びついた。

「もちろん!私も話をする相手がリアルにいなくて……。まだアニメの二期を見終わったばかりだけどよかったら話をしたい!」

「大丈夫!合わせるよ!」

「ありがとう」

思わぬリアルでの出来事に驚きながらも嬉しい。

リアルで話せる人ができた。

その後はカフェで交換したばかりのぬいぐるみマスコットをパフェと撮ってSNSに載せた。

今日は一人じゃないアピールで、相手のメニューもそっと端に載せて。

それからは盛り上がった。

ネタバレに配慮して丁寧に話してくれる彼女に感謝しつつ、今度映画もやるらしいと情報までくれた。

映画は何作かやっていて、今度はその最新作。

「楽しみなんだぁ!映画の原作を原作者の先生が書いていてね、幼馴染二人の過去も深掘りされるの」

「そうなんだ」

そういえばぬい活沼さんもタイムラインで発狂していたっけ。

「ねぇ、もしよかったら連絡先交換しない?」

「え?」

「あ、ごめん。いやならいいんだ。ただ、今日がすごく楽しかったから」

「そんな事ない!私もすごく楽しかった。連絡先、交換しよう」

初めての連絡先の交換。

ドキドキして操作をする指が震える。

連絡先に彼女の名前が書かれて、親戚以外で初めて増えた名前。

嬉しくて、スマホを抱き締めた。

「このアニメの話を出来る人がいなくて、ずっとSNSに壁打ち感想していたからリアルで話せる人がいて嬉しい!」

「私も、ずっとSNSに依存していた。だから、リアルでこうやって話せる人がいて嬉しい」

「えっ、SNSもやっているの!?なら、そっちでも繋がろうよ!」

ぐいっと迫られて思わず引いてしまう。

「ごめん、急すぎた。SNSは知られたくないって人、いるもんね」

謝罪をされて首を横に振る。

「そんな事ない。ただ、なんてことない写真しか載せていないからつまらないか心配で」

「気にしないで。私も妄想しかしていない」

親指をグッと立てられて、不安になりながらも自分のアドレスを教えた。

「えっ、すご!フォロワー何万人っているじゃん!」

「そんな事ないよ、私は私の好きなものが誰かに刺さればいいだけ」

「うわー!なんかかっこいいー!」

そう褒められて、彼女のSNSのアドレスを教えてもらった。

リアルの知り合いが相互になるのは初めてだ。

これからは迂闊なことを呟けないぞ、と思っていたら彼女も同じことを思っていたみたいで同じことを喋っていた。

なんだかおかしくて少し笑ってしまう。

「なんで笑うのさ」

「同じこと考えていたから」

「私もリアルの知り合いとSNSで繋がるの初めてだもん」

「私も」

そう言って笑い合った。

少し溶けたパフェのアイスは、どろりとしていたけれど、どこか爽やかだった。

「改めて、これからよろしく」

「うん。こちらこそ」

握手して、そのまま家に帰った。

机の上にはぬいぐるみマスコットを飾っている。

リアルとSNS。

二つの繋がり。

「今日は楽しかったな」

もう一枚、ぬいぐるみマスコットの写真を撮って「推しを交換してもらいました!」って呟いた。

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