第5話 平日の朝
平日の朝は気が重い。
学校に行きたくないから。
あそこに私の居場所はない。
友達もいない。
ただ、親の言うとおり、中学の先生の言うとおり、行ける範囲の学校で出来る範囲のことをして過ごしている。
SNSだけが私の世界だった。
広くて小さな世界。
そこに縋らないと生きていけない、息ができない、私の世界。
「おはよう」
習慣通りに挨拶しても、誰も返してくれないはずだった。
「おはよう」
その言葉に思わず顔を上げた。
喋ったこともない男子。
後ろの席の、窓際の、名前はなんだっけ。
ぽかんとしていると、続けて聞かれた。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫」
緊張して声が裏返ってしまった。
びっくりしたけれど、優しいなって思った。
自分の席に座って男子生徒をよく見てみる。
どうやら前の席の友人と喋っているみたいだ。
いいな。友達がいて。
私はスマホを取り出した。
「友達っていいな」
そんな一言だった。
消音モードにしているからSNSを開かないと気付きもしないいいねと共に、私の友人がどういう人か尋ねるリプライをもらった。
しまった、この文面だと私に友達がいて、その友達関連でいいことがあったふうにも捉えられるのか。
私は悩んだ末に糊さんやミルクティーさんを上げた。
まだ会ったことはないけれど、何度もリプライしたりDMしたりしているし、少しは仲良いよね。
そう思っていたら他の相互さん、某アニメのぬいぐるみが好きでよくぬいぐるみの写真を撮っているぬい活沼さんから引用されて「私はー?」なんて尋ねられた。
私は即リプライしてぬい活沼さんも大事な相互さんです!って返した。
私はこのぬい活沼さんの好きなアニメを知らなくて、熱心に勧められたので見てみたら、想像以上に面白くて今は一期を見終えて二期にハマり中だ。
私がこのキャラが好き、とぬい活沼さんに言うと、今度ガチャガチャでぬいぐるみマスコットが出ると教えてもらえた。
私はそれも楽しみの一つである。
絶対に当ててみせるぞ!
なんて気合いを入れていると、先程の男子生徒がスマホを弄っていた。
続いて糊さんからリプライ。
「俺も、大事な友達だと思ってる」
だって!
私は嬉しくて机に突っ伏した。
ニヤけるな、顔!
あーあ。みんなが学校にいればいいのに。
そうしたら、リアルも少しは楽しくなるのに。
スマホを握る。
不安な時の私の癖。
いつか、いつかオフ会とか出来ればいいな。
その前に通話とか。
ミルクティーさんに合わせて茶葉を勉強してみようかな。
ぬい活沼さんの話についていけるようにアニメを履修してからがいいかな。
……出来るかなぁ。
私はまだ見ぬ未来に向かって夢を膨らませていた。




