第27話 真実の人
SNSの投稿時間、位置、言葉遣いから糊さんの生活を想像する。
糊さんがどんな人かもっと知りたい。
糊さんもこんな気持ちでいてくれたのかな?
でも、不思議なことがある。
トマトが苦手ってSNSで言っていたのに、この間デートした時には平気で食べていた。
他にも違和感はあった。
SNSでの彼と、リアルの彼。
違うのは当たり前だと思っていたけれど、なんか違う。
二人の糊さん。
それが本当みたい。
糊さんが二人いるみたい。
学校での会話とSNSでの会話に齟齬が生じる。
糊さんは、糊さんだよね?
ねぇ、糊さん。
歪なあなたも愛しているから本当のことを言ってほしい。
糊さんは糊さんだよね?
その疑問をそのままSNSで尋ねる。
「僕は僕だよ。何を言っているんだ」
糊さんに笑われた。
そうだよね。
糊さんが二人いるわけないもんね。
私は糊さんしかいなくなってしまった小さな世界で糊さんしか見ていないからおかしくなっていたのかもしれない。
糊さんが私を好き。
私も糊さんが好き。
それだけでいいじゃん。
二人だけのタイムラインを見る。
繋がっている。
それでいいんだ。
そう思いながらも私は過去ログも漁って違和感の正体を突き止めようとした。
そうしたら糊さんのアカウントに、同じ服の欠片が映り込んでいた。
鏡だと思っていたけれど、違うみたい。
……糊さんの部屋に、糊さんと同じ服を着た人間がいる?
ゾッとした。
糊さんが二人いる。
それが確信に変わるのは早かった。
「糊さんに兄弟っている?」
「いるよ、兄が一人」
「そのお兄さんと服の趣味同じ?」
「うん。結構似てるんだ。なんで?」
私は答えられなかった。
「お兄さんって、どんな人?」
「どんな人かは君も知っていると思うけど」
「え?」
「同じクラスだって言っていたよ」
え?
糊さんが同じクラスなのは付き合っているから分かっていた。
でも、SNSの糊さんがなんで他人事のようにリアルの糊さんを言うのか分からなかった。
リアルの糊さんはSNSの糊さんのお兄さん?
「糊さんって、二人いる?」
怖くて、スマホがピコンて音をしても怖くてしばらく目を瞑って祈るように両手で握っていた。
覚悟を決めてSNSのリプライを見て愕然とした。
「僕達は双子で、二人で一つのアカウントを共有しているんだ」
……じゃあ、私が好きになった糊さんはどっち?
リアルの糊さん?SNSの糊さん?
「最初に私の写真にいいねをくれたのは?」
「それはあっち」
「……私と付き合っているのは?」
「両方」
淡々と事実しか言わない糊さん。
怖くて、悲しくて、寂しくて、返事をできないままベッドに潜り込んで朝が来なければいいのにと祈った。




