第25話 二人だけのタイムライン
その言葉に私は固まった。
「え?」
「乗っ取りって、案外簡単なものだよ」
いつもの笑みで言われる。
この人は誰だろう。
「糊さん?」
「うん」
糊さんがまた焼きそばパンを頬張る。
私はなんて言ったらいいか分からずに、少し距離を取った。
「怖がらないでよ、悲しいな。僕はこんなに君が好きなのに」
「でも、あなたは糊さんじゃない」
「糊だよ。君の写真に初めていいねをした」
「でも、乗っ取ったって」
「それは他のアカウントだよ」
この人には倫理観とかないんだろうか。
「乗っ取りはダメだよ」
糊さんはどこかおかしいと思っていたけれど、本当におかしい。
「糊さんが乗っ取ったアカウントって、どのアカウント?」
「ああ。ログインしただけで特に意味はないから時々見ているだけだよ」
「そうじゃなくて、どのアカウント?誰のアカウント?」
「君のだけど?」
きょとんと、どこまでも悪気がなく答えられた。
「私の、アカウント?勝手に乗っ取って見たの?」
「好きな子のこと、知りたいじゃないか」
好きな子!
その単語で一気にテンションが上がる。
私も糊さんに付き合ううちにだいぶおかしくなっていたらしい。
「糊さん、私のこと好きなの?」
「なんだ。知っているのかと思っていた」
「なんとなく、察していたけど、言葉にしてくれるのは初めてだよ」
そう言うと、糊さんは目を合わせて告げた。
「じゃあ言うね。僕は君が好きです。付き合ってください」
糊さんはおかしい。
わかっているのに、その言葉を嬉しく思う私も大概おかしい。
「嬉しい。私も、糊さんがどんな糊さんでSNSの糊さんでもリアルの糊さんでもすきだよ」
私は笑えているだろうか?
これは恋なんだろうか?
怖いと思うのも事実だ。
私は、糊さんを信じていいんだよね?
糊さん。
「嬉しい。僕達、両思いだね」
「うん」
頷くと、手を出された。
「スマホを出して。両思いなら、ミルクティーさんもぬい活沼さんも要らないよね?」
「いるよ!二人とも大事な相互さんだよ!ううん!もう友達だよ!」
「二人だけのタイムラインがいいのに」
「……わかった。それじゃあ、新しいアカウントを作るよ」
私の提案に、糊さんが仕方がないなぁって感じで肩を竦めた。
これは恋なんだろうか。
もう一度考える。
恐怖と恋と依存の境目ってなんだろう。
新しいユーザー名を考えているとき、指が震えていた。
私は新しいアカウントを作って糊さんをフォローして相互になった。
「これで二人だけのタイムラインだね」




