第23話 どっち?
どうしようか悩んだ末に、ミルクティーさんとぬい活沼さんに相談することにした。
「と、いうことで、私は本当にリアルの糊さんがSNSで初めていいねしてくれたあの糊さんか不安になってきています」
「それは不安になるよね〜」
「同じクラスなんだよね?物理的に離れるのはやっぱり無理か……」
この二人は安心する。
見えなくても安心する二人と、見えているから不安な糊さん。
私は、本当にリアルの糊さんを信じていいのかな。
「そういえば、今日はバイト代が入ったのでミルクティーさんがこの間おすすめしていた茶葉を通販してみました!」
「えっ、まじ?ありがとう〜!美味しいから楽しみにしていて!」
「はい!」
「私も買ってみたよ〜」
ぬい活沼さんはそう言うと、ミルクティーさんは美味しい淹れ方をまた話してくれた。
どこが美味しかったかとか、聞いていて勉強になることばかり。
「届いたらやってみます!」
「ぜひぜひ〜!」
そんな他愛無い談笑が楽しい。
最近の糊さんは、私が疑惑を持ってしまって楽しいのか怖いのか、よく分からない。
「糊さんとは……ちょっと距離を置いてみます」
「うん、それがいいと思うよ」
「急にSNSをブロックすると何されるか分からないかもだから徐々にフェードアウトするのがいいよ」
「……はい」
通話を終えて、ベッドに寝転がる。
明日も学校はあるしバイトもある。
推定糊さんとはまだまだ出会う。
……バイトは、やめようかなぁ。
考えて、考えて、いつの間にか寝てしまっていた。
そこには糊さんが二人いて、歪な笑みの糊さんといつもの笑顔の糊さんがいた。
朝、目が覚めると私は学校へ行く支度をした。
正直気が重い。
「おはよう」
「おはよう」
糊さんが返してくれる。
前は嬉しかったのに、今はどうしたらいいか分からない。
曖昧に微笑んで、友達の席へと向かった。
「おはよう」
「おはよー」
糊さんの方をちらりと見ると、まだこちらを見ている。
「ね、最近何かあった?ちょっと前までいい感じだったのに」
「うん、ちょっと……」
「まあ、あの子昔から変わっているしね。ついていけなくなった感じ?」
「昔からって、昔から知ってるの?」
ずずいっと寄った私に仰け反る友人。
「幼稚園から同じだよ。こんな田舎だもん。別に珍しく無いでしょ」
「変わっているって、どう変わっているの?」
その子は少し考える素振りをして、口を開いた。
「なんでも他人の真似をしたり、何かに執着するところかな」
その言葉は私の頭をガツンと殴った。
他人の真似をする、執着する。
糊さんの振りをして私に執着している?
私は怖くなって、糊さんがいる後ろが見れなくなった。
「大丈夫?また顔色が悪いけど」
「大丈夫。席へ行くね」
そう言って自分の席に座ると、糊さんが来た。
どうしよう。
「本当に顔色が悪いけど、大丈夫?」
「大丈夫だから……。ありがとう」
「そう?」
糊さんは心配そうだった。
胸が痛む。
でも、この想いは断ち切らないといけない。
私は俯いて糊さんからの視線から逃れた。
「バイトを辞める?」
「はい」
「……何かあった?」
店長が気遣わし気に尋ねてくる。
私は何も言えずにただ辞めたいとだけ繰り返した。
せっかく覚えた仕事。
話をするようになった常連さん。
楽しくなった仕事。
優しい店長。
そのすべてを手放すのは寂しい。
でも、糊さんが怖くて続けるのは難しい。
手が震える。
こうして私の初めてのバイトは終わってしまった。
短かったけれど、楽しかったな。
糊さんが扉の外からその話を聞いていて、ぐっと手を握っていたのは気付かなかった。
その激情の意味を私は知らない。




