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#二人だけのタイムライン  作者: 千子


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第22話 こわい

「どうかした?」

バイト中に糊さんの顔を凝視していたみたい。

穏やかに尋ねられるけど、この人は本当に糊さんなんだろうか。

糊さんのアカウントを乗っ取った別人なんだろうか?

だとしたら、なんで?

なんで糊さんのアカウントを乗っ取って私に近付いて私に笑ってみせたの?

「糊さん……」

「だから、リアルで糊さんはやめてってば」

微笑まれて錯覚してしまう。

この人は本当に糊さんなんだと。

でも、本当は違うかもしれない。

ねえ、糊さん。

あなたは本物なの?偽物なの?

「これ、重いから僕が持つよ」

「あ、ありがとう」

優しさは本物。

そうだ。

糊さんが私を信じてくれたように私も糊さんを信じなきゃ。

SNSなんてあやふやなものだもの。

現実の糊さんを信じよう。

そして休憩になりバックヤードに引っ込むと、糊さんはスマホを弄って私に画像を見せつける。

「ほら、このアカウントが最初に君の写真を加工だとか言い出したアカウントだと思うんだよね。これが一番古いし。他はフォロワーが多い君に嫉妬して便乗したって感じ」

見せられたIDに一瞬、記憶から何かが閃こうとしたけれど、すぐに靄が掛かったかのように分からなくなってしまった。

……私も調べよう。

一瞬見たけれど、意味のあるIDだからすぐに覚えられた。

検索するとヒットしたし、画像欄に私の写真がある。

ここが不自然だとか、自己主張の塊だとか。

好き勝手言ってくれる。

そもそもSNSをやっているなら少なからず承認欲求くらいあるんじゃない?

私はこのアカウントを熱心に見詰めた。

その横顔を糊さんが見ていることなんて知らずに。

「ねえ、なにか不安なことがある?」

「え?」

「ずっと浮かない顔をしている。まあ、晒されたり炎上したりして、落ち着いている方がおかしいか」

「……うん」

それからあなたが私が好きになった糊さんかどうかも不安だよ。

不安なことしかない。

だから縋りたいのかもしれない。

ミルクティーさんとぬい活沼さんはなんて言うだろう。

するとそんな心の中が読まれたのか、糊さんから二人の名前が出た。

「そういえば、君の相互にミルクティーさんとぬい活沼さんがいたよね。無事に繋がれてよかったね」

我が事のように微笑む糊さんは、私が恋した糊さんの笑顔だ。

「うん!」

私も微笑み返して肯定する。

「でも、二人だけのタイムラインが終わっちゃったのは残念だな」

糊さんが少し瞼を伏せる。

……糊さんは、やっぱり優しい。

信じたい。

私と一緒の写真を撮って、SNSをまた再開するきっかけをくれた、優しいクラスメイトの糊さん。

「糊さん。糊さんは糊さんだよね」

「そうだよ。なんだよ、今更」

糊さんが笑っている。

穏やかな時間。

ずっと続けばいいのに。

「なんでもない」

笑ってバックヤードから出て品出しを開始する。

あ、これ、ずっと前に発売が楽しみって言っていた糊さんが好きなお菓子の新作だ。

「糊さん」

お菓子を見せると、首を傾げられた。

「何?置き場所がわからない?」

あれ?

え?

「糊さんの好きなお菓子の新作だから」

「ああ!そうだね!教えてくれてありがとう」

変わらない笑顔。

こわい、そう感じたのは初めてのことだった。

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