第16話 同じ空
あれから1週間が経った。
まだ、SNSにログイン出来ていない。
「どうしようかなぁ」
傷心の学生が来る場所なんて屋上に決まっているなんて偏見で、初めて屋上に来た。
立ち入り禁止って書かれていると入りたくなる不思議。
鍵は掛かっていなかった。
空を見て、初めて写真を撮った日を思い出す。
あの時は、誰かとこの景色を共有したいと思ってSNSを始めて載せたんだっけ。
簡単な気持ちで始めたSNSは、簡単に終わってしまう。
ぼんやりと空を見て、見ていられなくて俯くと、扉が開く音がした。
彼だ。
何をしに来たんだろう、と人のことを言えないながらも見ていると、声を掛けられた。
「雲が、珍しい形をしているね」
俯いていた顔を上げると、白い雲がゆっくり流れていた。
そういえば、最初にバズった写真も空だった。
彼がスマホを掲げて、シャッターを切る音がした。
「ほら、見て」
画面に映っていたのは、糊さんのアカウント。
投稿されたばかりの、さっきの空の写真。
「……糊さんって、あなたなの?」
彼は一瞬ためらってから、少しだけ笑って頷いた。
「ずっと、君の写真を見てた。どんな人が撮ってるんだろうって」
「……」
「炎上のこと、僕も見てた。怖くなるの、分かる。でも、君の写真が好きなんだ。SNSに載せなくてもいい。誰かの“いいね”のためじゃなくて、君自身のために撮ってほしい」
その言葉が、胸の奥で静かに響いた。
空の色が、少し滲んで見えた。
きっと涙のせいだ。
でも、泣いていることを彼に気づかれたくなくて、私はただ、空を見上げた。
「私、またSNSをやってみるね」
「そっか」
その一言だけでも肯定されているようで嬉しい。
「最初のフォローはあなたがいい」
「僕でいいの」
私は小さく頷く。
「あなただからフォローしたい」
「僕も君だからフォローしたい」
そう言って笑い合って、私は新しくアカウントを作った。
最初のフォロー兼フォロワーは糊さん!
「ふふふ」
「そんなに嬉しいこと?」
「嬉しいよ。リアルでも、SNSでも、繋がっているの、嬉しい」
あんなに怖かったSNSが怖くない。
私には糊さんがいる。
「ミルクティーさんとぬい活沼さんもフォローしなきゃ」
フォローをして、通知をオフにしてスマホをポケットにしまう。
私は私なりにSNSとの付き合い方を考えよう。
「私、糊さんがいてくれたら炎上も怖くないな」
「そこは炎上しないようにしようよ」
笑われて、あの時の恐怖が私の中で薄れていく。
糊さんがこの人でよかった。
この人が糊さんでよかった。




