第15話 リアルとSNSの優しさ
ログアウトしたものの、気にはなってちらりとスマホを見る癖はやめられない。
SNS は、もう私の一部だった。
「はぁ……」
バイトの休憩中にスマホを見ないように鞄の奥深くにしまい込むと、やることが一気になくなってしまう。
「お疲れ様」
「お疲れ様です!」
「あれ?珍しいね。スマホ弄っていないの」
「……ちょっと」
彼は特に何も言わず、休憩室の椅子に座った。
「なにか嫌なことあった?」
私は言葉を濁した。
「少し」
炎上してSNSを見れなくなりましたなんて言えない。
「なんでもいいけど、無理しないでね。この間も早退したでしょう」
「……うん、ありがとう」
この人は、SNSで炎上したくらい、なんて嘲笑ったりしないだろうな。
相談してみようかな。
いや、単なるクラスメイトでバイト先が同じ女にそんな話されて重くない?
私ならなんて返せばいいのかわからない!
助けて!糊さん、ミルクティーさん、ぬい活沼さん!
心の中で叫んでも、ログアウトしたままのSNSから返信が来るはずがない。
……もう、ログインしても平気かな?
でも、まだ炎上していたら?
私のID付きで、私の写真が載せられている、あの瞬間を覚えている。
怖い。
我知らず、両腕を抱きしめていたみたい。
「大丈夫?」
もう一度尋ねられた。
「……大丈夫」
「……SNS、炎上したんだってね」
「えっ!?」
なんで知っているのかという疑問で俯いていた顔を上げる。
「ちょっとした話題になっているの、気付いていなかった?」
「なんにも……」
「SNSでも学校でもね。守られているのは君がいい友人を持ったからだよ」
リアルの友人も、ミルクティーさんも、ぬい活沼さんも、糊さんも、確かにいい人たちだ。
「なんで、そんなこと教えるの?」
「ん?SNSを見ようとしていたでしょ。まだ見ない方がいいよ。収まったら教えてあげる」
思わぬ言葉に目をぱちくりさせた。
「あ、ありがとう」
人に支えられている。
じわり泣きそうになったところに店長がやってきた。
「あー!女子泣かしてるー!」
「違いますって、店長」
「そうです、励ましてもらってたんです!」
「あー…。そうだよねぇ。最近元気なかったもんねぇ。はい、飴ちゃんあげる。これで元気出して」
そう言って、また飴を渡された。
いつも持ち歩いているんだろうか?
「店長も、ありがとうございます」
頭を下げると笑われた。
「何があったか分からないけれど、笑顔が一番だよ。そうしたら悪いものも寄り付かないから」
「僕もそう思うな。あの件は、何もしていないし悪くないんだから胸を張っていいと思う」
……リアルにもSNSにも恵まれていないって時期があったけど、私はちゃんと恵まれている。
リアルもSNSも悪くない。
そう思えたのは、みんなのおかげ。
「ありがとうございます」
なんとか歪ながらも笑顔で応える。
大丈夫。私はまだ、立っていられる。




