**第四話 青色の通告と裏切りの予感**
投稿遅れて申し訳ありません。第四話です!
星明りの消えゆく夜明け前、一番深い闇が訪れる時刻に、島の全参加者の端末が一斉に鋭い電子音を発した。
千嶋紗英は飛び起き、瞬時に警戒態勢に入った。隣で眠るリクトもむくりと起き上がり、端末の光る画面を見つめる。
「な、なんだろう…?」
無機質なAI音声が、冷たく朝もやの中に響き渡った。
「参加者各位、お知らせします。本日1200時より、初の『特別評価試験』を実施します」
紗英の背筋が凍りつく。
ついに来たか…
「試験内容は『群島の覇者』。島の北部沿岸に分散する三つの小島に、それぞれ『旗』を設置しました。1800時までにいずれかの旗を確保し、自グループの拠点で掲げ続けたグループに、報酬として500ポイントを付与します」
リクトが息を呑んだ。
「ポイント…?」
私は{ポイント}の制度があることを事前情報で密かに知っていた。
なによりもこのような試験では参加者の競争を生み出すのが一番重要だからだ。
「ポイントは、食料、水、医療品、または…『情報』との交換が可能です。なお、旗の保持グループは、その時点で自身の位置情報が全参加者に公開されます」
紗英の頭脳が高速で回転する。
旗を奪う側は位置情報を頼りに襲撃できる。
守る側は常に襲撃の恐怖に晒される。
しかも「情報」との交換…これは、このプログラムの核心に迫るための餌だ。
「試験区域の全ては、終日『影の領域』として指定します。あらゆる行為が黙認されます。脱落者が発生した場合、その時点で試験は終了となります。以上です」
通告が終わると、森の静寂が以前よりも重く深いものに感じられた。
私の予想だとそのポイントというもが試験終了後に現金など何らかの形で還元されるのではないかと見込んでいたが、その点についてはアナウンスでは触れられていなかった。
リクトの顔色が青ざめている。
「どうしよう、紗英ちゃん…僕たち、参加するの?」
紗英は偽りの不安そうな表情を作りながら、内心では状況を分析していた。
参加しなければ、他のグループより明らかに不利になる。しかし参加すれば、このちっぽけな二人きりのグループが、大人数のグループの標的になる。
「わ、わからない…」
彼女はわざと声を震わせた。
「でも…ポイントで情報が手に入るなら、この島のことをもっと知れるかもしれないよね」
その時、彼女の端末が再び光った。
今度は個人メッセージだ。
送り主は…ケイタ。合理派のリーダーだ。
『同盟提案。旗確保作戦に共に参加しないか? 我々は情報と戦略を、君たちは…おそらく持っている別の何かを提供してほしい』
紗英はメッセージを握りしめた。
別の何か? 彼らは何を嗅ぎ取っているのだろう?
「誰から?」
リクトが尋ねた。
紗英は迷った。
このメッセージを共有すべきか? リクトは本当に信用できるのか?
「合理派の…ケイタさんから。同盟を求められているみたい」
彼女は意図的にメッセージの最後の部分を伏せた。
リクトの目がわずかに見開かれた。
「どうする?」
その質問に、紗英はある違和感を覚えた。
リクトの声に、戸惑い以上のもの――おそらくは警戒心のようなものを感じたからだ。
「わからない。でも…信じられるかどうか」
彼女はリクトをまっすぐ見つめた。
これは単なる演技ではなく、ある種の探りでもあった。
リクトはうつむき、しばらく沈黙した。
「そうだね…誰も簡単には信じられない」
その言葉は、紗英の胸に不思議な響きで届いた。
彼らが議論していると、遠くから怒鳴り声と物音が響いてきた。
既に、旗をめぐる小競り合いが始まっているのだ。
紗英は決断した。
「まずは状況を見に行こう。無理して旗を奪わなくても、他のグループの動きを観察するだけでも意味があると思う」
リクトはうなずいた。
「わかった。君について行くよ」
しかし、紗英は気づいていた。
リクトのその同意の裏に、かすかに潜む不安と迷いを。
準備を整え、彼らが洞窟を出ようとした時、リクトが突然立ち止まった。
「あのさ…紗英ちゃん」
彼の声はこれまで以上に慎重だった。
「もしも…もしも僕が何か隠していることがあったとして、それにはきちんとした理由があるんだ。君を傷つけるつもりはないって、ただそれだけは言わせて」
紗英は一瞬、息を止めた。
これは偶然の言葉なのか、それとも何かを悟られた上でのメッセージなのか。
最も無邪気な笑顔を作りリクトに言った。
「何言ってるの、リクトくんは私を何度も助けてくれたよ」
だが心の中では、警告の鐘が高らかに鳴り響いていた。
ついに動き始めたな…
島の支配者だけでなく、最も身近にいるはずの少年までもが、もはや予測不能な駒となっていた。
(了)
次もすぐに投稿するのでブクマ評価をして待ってくださると嬉しいです!




