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**第一話 楽園の檻**

新連載です。よろしくお願いします。

**第一話 楽園の檻**


水平線の彼方から現れた島の輪郭は、次第にその巨大な姿を露わにしていった。


エメラルドグリーンの海は、白い砂浜で覆われた海岸線で美しく弧を描き、その背後には、うっそうとした密林が視界いっぱいに広がっている。


そしてさらに奥には、鋭く切り立った花崗岩の山脈がそびえ立ち、頂上は雲に覆われてその全容を覗かせない。この島は、楽園というより、外洋に浮かぶ巨大な自然の要塞のように見えた。





コードネーム・シオリ——本名、千嶋紗英(17)は、高速艇のデッキに立ち、肌に纏わりつくような潮風を感じながら、この島の規模を静かに測量していた。


私の職業は学生ではない。


私の職業は情報工作員.....スパイだ。


今回の任務はこれまでで一番規模が大きい、潜入ミッション。


ことの発端は、ある世界的大企業が無人島生活チャレンジという企画のチケットを売り出したことから始まる。


チャレンジ!なんて表向きは明るいが、このチケットは一部の若者にしか知られていないとてつもなくどす黒い企画だ。


そもそもこのチケットの存在を知っているのは借金地獄を若者とかそこら辺の奴らだ。


大抵の人は当然裏があることに気づくのだが、追い込まれている人というのはどうもそうはいかないらしい。


この企画の本当の目的、それは,,,,,,,,,,,,,,


それが完全にわかっていたら私は今こうして船の上に立っていないだろう。


ただ1つ情報がある。


どうやらこの企画に向けて桁違いの費用がかけられており、その企業の極秘発注品目の内容がまぁぁ物騒だったのだ。


この企画では絶対に人が死ぬ。


そう言い切れるだろう。




私はもう一度海を挟んだ島を見る。


「想定以上に大きい…」


参加者150名が放り込まれるには、十分すぎる広さだ。逃げ場はあるが、それと同じだけ危険が潜む。


「いよいよだな! 楽しみだぜ!」

「あの山、登れるのかな…?」


周囲からは、同じく参加者たちと思しき若者たちの、期待に満ちた声が聞こえる。紗英は彼らを一瞥し、心の中で戒めた。


*「彼らはまだ、ここが何であるかを理解していない」*


彼女自身は、抽選に当選した幸運な女子高生を演じる。


少し人見知りで、頭は悪くないが、決して目立たない。


無害で、時に頼りなく見えることが、最大の武器だ。任務は一つ——この『パラダイス・ロスト』と名付けられたサバイバルプログラムの内部情報、特にその真の目的と背後関係を探り、組織に報告することだ。


桟橋に降り立つと、冷たいほどの管理システムが待ち受けていた。


一人ひとりに黒いリストバンド型端末が配布され、無機質なAI音声による説明が流れる。


**「参加者各位、150名の登録を確認しました。本プログラムでは、島の所々に設置された監視カメラが映す『青色エリア』内での暴力行為は、一切を禁じます」**


ざわめきが起こる。安心したような空気。


**「ただし」**


AIの声に、わずかな間が置かれる。


**「カメラが捕捉しない『影の領域』では、一切の行為が黙認されます。略奪、暴力、そして…殺人もです」**


瞬間、ざわめきが凍りついた。誰もが言葉を失い、隣の者の顔を見つめる。


私達組織側の想定通りの展開だ。


しかし紗英も周囲に合わせて、恐怖で固まった表情を作る。


しかし、その目は端末に表示された地図を貪るように読み取っていた。


青色エリアは、確かに点在しているが、それは点のようなもの。


その隙間を埋める広大な「影」が、この島の大部分を占めている。


*「移動する死角… 主催者が意図的に危険地帯を作り、それを移動させる。これは単なる無法地帯の提供ではない。特定の状況下での人間の反応を“選別”しているのだ」*


オリエンテーション後、参加者たちはそれぞれに装備を受け取り、指定されたスタート地点へと散っていく。


紗英はわざと遅れを取り、誰とも組まずに、ひっそりと行動を開始した。


「出発しますか」


密林に入ると、空気は一変する。


鬱蒼と茂る熱帯の植物、蠢く虫の音、そしてどこからか聞こえる鳥の奇怪な鳴き声、太陽の光は葉の隙間からしか差し込まず、昼間でも薄暗い。


彼女は訓練で叩き込まれたサバイバル技術を一切使わず、ただ慎重に、時折転びそうになりながら歩く。


初日はまずテンプレをこなすだけだ。


水場を探し、安全な寝場所を確保する——それは、ごく普通の参加者がするであろう行動だ。


夕暮れ時。最初の「事件」は起きた。


海岸沿いの洞窟付近——地図上では明確な「影の領域」だった——で、食料と水をめぐる小競り合いが発生する。


紗英は遠巻きにし、観察する。すぐに、何人かがグループを形成し始め、力づくで他者の物資を奪い取る光景が目に入った。


*「適応の早い連中だ。だが、それは裏切り者にもなり得る」*


その混乱の中、一人の少年が彼女の視界に入ってきた。


容姿は整っており今までのサバイバルでも余裕がありそうな表情だ。


少し気弱そうだが、目が澄んでいる。


彼は争いを避け、森の縁を歩いていた。そして、転んで足を痛めたふりをしている私に気づき、近づいてきた。


「大丈夫? 無理しなくていいよ。ちょっと…ここ、安全そうな場所を見つけたんだ」


私は内心で眉をひそめる。


*「過剰な親切は、この島では不自然だ」*


彼は単純な善人か? それとも、より巧妙な策士か?


「ありがとう…」


彼女はわずかに震える声で答えた。


「でも…あの人たち、怖い」


「ああ。」


彼は洞窟の方へ一瞥を投げた。


「みんな、パニックになってるんだよ。でも、一人よりはましだと思う。一緒に来る?」


その誘いを断ろうとしたその時だった。


**バン!**


鈍く響く炸裂音が、夕焼け空を切り裂いた。洞窟の方からだ。


悲鳴と怒号が起こり、やがて、主催者側の護衛らしき黒ずくめの男たちが現れ、何事もなかったかのように一つの遺体を運び去っていく。


運ばれていったのは、最初に略奪を始めた男の一人だった。


AI音声が静かに告げる。


**「参加者一名、脱落。残り149名です」**


説明はない。問い合わせもない。ただ、冷徹な事実が提示されるだけ。


紗英は隣にいた彼の腕にすがりつき、本物の涙を浮かべた。


それは演技ではなかった。


死の現実が、彼女の訓練で固めた心の防壁を、わずかに揺るがしたからだ。


*「これは、ゲームなんかじゃない…」*



話を聞くと彼の名前は桜井リクトというらしい。


リクトは彼女を優しく支え、「もう大丈夫だ」と囁いた。


しかし、紗英は彼の目の中に、一瞬よぎる複雑な影を見逃さなかった。


彼もまた、震えている。恐怖で? それとも…。


夜の帳が下りると、島は不気味な静寂に包まれた。


遠くでキャンプファイアの光が揺らめき、囁き声や泣き声が風に乗って聞こえてくる。


紗英はリクトと共に見つけた小さな洞窟の隅で、一人きりになった時、ようやく本来の姿に戻った。


小型の端末を起動させ、組織から提供された特殊なフィルターを通して島の地図を表示する。


無数の青い点と、それらを縫うように、規則的なパターンで移動する微細な「影」の軌道。


*「移動する死角… 心理的圧迫の持続、そして淘汰。真の目的は、人間の極限状態での社会動態の観察か? それとも…」*


彼女は目を上げ、闇を見つめた。

*「…ここには、私のような“プロ”が、他にもいるはずだ」*


150人もの参加者の中に、情報工作員や assassin が潜んでいる可能性は十分にある。


彼らは仲間になるのか、敵になるのか。


任務は、ただ情報を集めることから、この狂った実験場そのものを暴き、生き延びるという、より過酷なものへと変容しつつあった。


私はそっと端末を閉じて静かに眠りに落ちた。


第一話どうだったでしょうか。


第二話もすぐ出すのでブクマや評価で応援していただけると嬉しいです。

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