アリナが決めること
「アリナ良かったではないか」
神様がわたしの肩に手を置きながら言った。
「うん、わたし、真来に大切に思われていたことがわかって良かったよ」
「あのバスに乗って良かっただろう」
「うん、あのバスに乗った選択は間違っていなかった」
わたしは心からこのグリーン王国へやって来ることが出来て良かったと思った。
「神様、一つ質問なんですが安莉奈と親子だとわかったんですが、俺の住まいに連れて帰ることは出来るのでしょうか?」
真来は改まった声で尋ねた。
「へ!?」と神様は驚いた声を出す。
「ふへっ!?」とわたしも驚きの声を上げる。
神様は視線をわたしに向け「それはアリナが決めることだな」と言った。
「わ、わたしは……今はこのグリーン王国のアリナで……安莉奈でもあるけどこの世界にお父さんとお母さんがいるよ」
わたしはこのグリーン王国のお父さんとお母さんのことが大好きだ。血は繋がっていないけどそれに本当の親だと思っている。
だけど、真来もわたしのお父さんなのだ。どうしたらいいのかな。
「そ、そうだよな……安莉奈には今の生活が有るもんな。変なこと言ってごめんな」
真来はあははと笑いながら言ったけれど、その表情は少し悲しげだった。
わたしがじっと黙っていると、真来が「おでんも食べ終えたしそろそろ帰ろうかな」と言った。
「え! 真来もう帰るの?」
「うん、おでん美味しかったよ。久しぶりにおでんを食べられて嬉しかったよ。安莉奈ありがとう」
真来はにこやかに笑いわたしを見る。その表情はやっぱり優しくて懐かしくてずっと見ていたと思った。だって、この人はわたしのお父さんだよ。
「か、帰らないで」とわたしは思わず言ってしまった。
「え!?」
「真来ここに居て」
「安莉奈……俺が居ると仕事の邪魔になるだろう」
「ううん、お茶持ってくるからまだ帰らないで」
わたしは首を横にぶんぶん振りそれから真来の顔を真っ直ぐ見て言った。
「安莉奈……では、お茶を頂こうかな」
真来は顔をくしゃっとして笑った。その笑顔はもうおじさんの真来なのに少年みたいに見えとっても可愛らしかった。
「は〜い!! では、安莉奈特製のお茶を淹れてきま〜す」
わたしはスチャと敬礼ポーズをとり満面の笑みを浮かべた。そんなわたし達のやり取りを神様は頬を緩め眺めていた。
洗い場に戻ったわたしはお茶を淹れる準備をする。と、いっても創造魔法でだ。
わたしも飲みたくて真来に喜んでもらえそうなお茶はなんだろう?
「う〜ん、やっぱり緑茶かな? あ、そうだ神様にもらった小箱にある料理本を見てみよう」
わたしは小箱から料理本を何冊か取り出した。その中の一冊『日本のお茶』と表紙に書かれている料理本のページをぺらぺらとめくる。
『お茶文化の発祥地は中国であるようじゃー……奈良時代から平安時代に中国から持ち込まれたらしいのじゃー。その当時の茶は薬として飲まれていた』と書かれていた。
「ふ〜ん、そうなんだ。神様って異世界の神なのに地球のことに詳しいな」
なんて思いながら、わたしは料理本のページをめくる。そのページには。
『現在飲まれている日本茶(緑茶)の発祥地は京都の宇治田原町だったようなのじゃ。因みに江戸時代に永谷宗円が現在の日本茶の基礎を築いたとのことだー』
と書かれていた。
「へぇ~そうなんだ」
日本で生産されているお茶はほとんどが緑茶のようだ。




