神様もわからないのですか?
神様もわたしと同じように首を傾げている。
「神様はなんでもわかっているんじゃないの?」
わたしは神様を見上げ尋ねた。
「神様であるからわかっているのだがわからんな……」
「それってわからないってことだよね?」
この神様ってば神様のくせに誤魔化している。とんでもない神様だよと呆れてしまう。なんか、テヘヘと照れたように笑っているし。
「う〜ん、まあ、わからないそういう言い方もあるかな……」
「やっぱりわからないんだ〜」
「わからないのですね」と真来も残念そうに言った。
神様は口に拳を当てコホンと一つ咳払いをした。そして、「真来が誰に何にこの世界へと導かれたのかわたしは知らない。だが、アリナはこのグリーン王国の平和とそれから真来に再会するためにわたしに召喚されたことは間違いないはずだ」
と言った。
「真来に再会するために?」
「俺に再会するために?」
わたしと真来はほぼ同時に言った。
「そうだ、アリナは親からの愛情を求めていた。だが諦めてもいた。そんな時この神様であるわたしがアリナの目の前に威厳のある姿で現れたということじゃ」
神様は神々しいドヤ顔でそう言ってわたしと真来を交互に見た。
「確かにわたしは、叔母さんに引き取られ辛かった。イトコの富菜ちゃんも意地悪だったし。諦めていたよ。両親に会いたいなと思ってはいたけど……」
わたしはそこまで言ってチラリと真来に視線を向けそして前に向き直り「でも、両親に捨てられたと思っていたからちょっと憎んでいたかもしれない」と言った。
「安莉奈は辛かったんだな……ごめんよ」
深い海の底からズーンと響くような悲しみが溢れ出しそうなそんな声を真来は発する。
「ううん、真来はわたしのことを捨てたんじゃなかったんだもん。勘違いしてごめんね」
真来もものすごく辛かったんだよね。そう思うと、涙がポロリとわたしの瞳から零れ落ちた。
「あ、安莉奈……泣かないでくれよ」
真来はどうしたらいいのかといった様子であたふたとしながらわたしを見ている。涙を止めようとするんだけど、どんどん涙が溢れる。だって、辛かった地球の出来事を思い出すのと同時に今、目の前に真来《お父さん》がいるんだもん。
真来もきっと辛かった。わたしも辛かった。
砂色のような世界だったわたしの地球での生活。真来と一緒に過ごした時間は覚えていない。けれど、少なくても幸せだったんだろうなと思う。
だって、目の前にいる真来からとてもあたたかいものを感じるんだもん。
このグリーン王国でのお父さんに負けないくらいに。優しい父親だったんだろうな。
わたしは零れ落ちる涙を手の甲でゴシゴシ拭いニコッと笑った。
「あ、安莉奈が泣き止んでくれて良かった」
真来はほっと安堵の息を漏らした。
「えへへ、真来の悲しみと真来に会えた喜びで涙が止まらなくなっちゃった」
わたしは涙に濡れた顔で笑う。




