安莉奈
「友達の握手だね」
真来はわたしの差し出した手を握り返してくれた。その手は大きくてあたたかくて温もりを感じ懐かしいようななんだか不思議な気持ちがふわふわと、漂ってきた。
「うん」と答えたわたしは、真来の手をもう片方の手でぎゅっと握ってしまった。
「アリナちゃん?」
きょとんと首を傾げる真来にわたしは、「なんかね、と〜っても懐かしいなあと思ったの」と言った。
「そっか、俺も懐かしいなと感じたよ」
真来はそう言ってにこやかに笑った。その笑顔も真来の手から伝わってくる温もりもやっぱり懐かしくてどうしてだろう? 涙が出そうになった。
「わたし、地球のことあんまり覚えていないのに好きな場所でもないのに真来のことや日本のことが懐かしく思えてきたよ」
わたしは、真来から手を離しそれからその顔をじっと見た。真来もわたしのことを切なげな目で見ていた。
「アリナちゃん、君はやっぱり娘と似ているよ。あ、何度もこんなことを言ってごめんね」
謝る真来のその目にわたしはなぜだか惹き込まれてしまいそうになる。
「ううん、娘さんの代わりにしてくれてもいいよ。友達だもん」
わたしはにっこりと笑う。
「ありがとう。アリナちゃん」
「ねえ、真来の娘さんの名前は何ていうの?」
「安莉奈だよ。日本の読み方だけどね」
真来は鞄からノートとペンを取り出し『安莉奈』と書いた。
「えっ!! 娘さんもアリナって名前なの? 本当に!! 安莉奈なの?」
わたしは真来の書いた『安莉奈』の文字にびっくりして目を大きく見開いた。
「ああ、安莉奈だよ。アリナちゃんどうしたの?」
真来は不思議そうに首を傾げている。
「わたしも安莉奈だよ!」と答えた。
「まさか、それは!」
真来も驚きを隠せない表情をしている。
わたしと真来はお互いを指差し合う。真来は口をぱくぱくさせまるで魚のようだ。わたしも真来と同じく口をぱくぱくさせているのできっと、魚みたいな顔になっているんだろうな。
なんてことを考えている場合ではない。
「ま、ま、まさか!」とわたしはやっとの思いで叫んだ。
「ア、アリナちゃん君は!!」と真来も大きな声を出す。
「んにゃん? にゃんか騒がしいにゃん」
「ん? うるさいぞ」
すっかり存在を忘れていたもふもふな二匹がおでんの汁をぺろぺろと舐めながらわたしと真来に視線を向けた。
「あ、モフにゃーにギャップちゃんいたんだ」
「あ、君達のことをすっかり忘れていたよ」
わたしも真来も話しに夢中で愛くるしくて食いしん坊なもふもふの存在をすっかり忘れていたのだ。
「にゃんと。失礼だにゃん」
「なんだって! このライオン魔獣鳥である俺のことを忘れるなんてな」
モフにゃーとギャップはぷりぷりしているけれど、今はそれどころではなーい。
わたし達はモフにゃーとギャップを無視して、
「まさかその安莉奈はわたし!?」
「まさか、アリナちゃんは安莉奈?」
と驚きの声を上げ合った。




