みんなでおでんを食べよう
モフにゃーにギャップはわたしとおでんを交互に見比べ、それからお客さんの男性をじっと見ている。
「あはは、可愛らしいもふもふさん達。一緒におでんを食べるかい?」
男性は優しい眼差しを食いしん坊な二匹に向けた。
「食べるにゃん。わたしおでんをご一緒するにゃん」
「俺もおでんの食べ放題じゃない。おでんをご一緒するぞ」
モフにゃーとギャップのその目はまるで宝石のようにキラキラと輝いた。
「もう、モフにゃーにギャップちゃんってば……」
「困った奴らだよな」
わたしとお父さんは顔を見合わせ溜め息をつく。
「あはは、いいんですよ。まだ、がんもどきにそれから、こんにゃくにちくわ、厚揚げにしらたき、さつま揚げ、ごぼう天やはんぺんもありますからね」
おでんの湯気に包まれた男性はとっても太っ腹で優しい人だ。
「やった〜にゃん!!」
「やったぞ!!」
モフにゃーとギャップはめちゃくちゃ嬉しそうな顔でバンザイをする。
「お客さん、ウチのもふもふ達がすみません……」とお父さんが謝る。
「いえ、いいんですよ。みんなで食べるとより美味しいですしね」
男性はやっぱり優しくて良い人だ。
「にゃはは、わたし、厚揚げにしらたき、さつま揚げ、ごぼう天にはんぺんを食べるにゃん。ギャップちゃんにはこんにゃくとちくわをあげるにゃん」
モフにゃーは頬を緩め食いしん坊な顔が炸裂する。
「おい、モフにゃー主、何故に俺はこんにゃくとちくわだけしか食べられないんだ?」
ギャップがモフにゃーに抗議をする。でも、なんかおかしいような気がする。だって。
「ねえ、モフにゃーにギャップちゃんどうして二匹でおでんを全部食べちゃうの?」
「うにゃん?」
「ん?」
モフにゃーとギャップはきょとん顔で不思議そうに首を横に傾げた。
「モフにゃーとギャップちゃんはお客さんにおでんを分けてもらうんだよ。わかる?」
わたしはもふもふな二匹の肩に手をポンと置き二匹の目を見て言った。
「そうにゃの?」
「そうなのか?」
モフにゃーとギャップは理解してくれたのかわたしの目を見返す。
そして、モフにゃーが。
「お客さんにゃん。わたしに厚揚げにしらたき、さつま揚げ、ごぼう天にはんぺんを分けてくださいにゃん。それと、ギャップちゃんにはこんにゃくとちくわを分けてくださいにゃん」と言った。
なんか違うような気がするのだけど……。
続いてギャップも。
「お客さん、俺に厚揚げにしらたき、さつま揚げ、ごぼう天にはんぺんを分けてください。それと、モフにゃー主にはこんにゃくとちくわを分けてください」
なんて言うんだもん。
優しいお客さんはそんな二匹に視線を向け微笑みを浮かべている。
「あはは、もふもふちゃん達には敵わないな」
男性は頬を緩めニコニコしている。なんて心が広いの。まるで大空のようだ。それか神様や仏様だ。
「わたしモフにゃーだにゃん」
「ライオン魔獣鳥である俺の名はギャップだ。ここにいるモフにゃー主が付けてくれたんだ。どうだ、カッコいい名前だろう」
なんて自己紹介を始める二匹にわたしは呆気にとられた。お父さんに視線を向けると苦笑いを浮かべていた。
「モフにゃーちゃんにギャップちゃんだね。良い名前だね」
男性はやっぱり優しくてにっこりと笑い二匹の名前を褒めてくれた。
「では、モフにゃーちゃんにギャップちゃん。一緒におでんをいただこう」
男性はそう言って椅子をぽんぽんと叩いた。
「はい、にゃん」
「やったぞ」
二匹は大喜びで椅子に腰を下ろした。
「モフにゃーにギャップちゃん、お客さんのおでんを全部食べたらダメだからね」
わたしは舌舐めずりをしているモフにゃーとギャップに釘を刺す。
そんなわたしにお客さんが、「アリナちゃんもおでん一緒にどうぞ」と言って手招きをした。
「へ? わたしもおでん食べていいの」
「ああ、もちろん。さあ、どうぞ」
男性は、もう一度手招きをする。
「では、わたしもご一緒に」
わたしは、男性の目の前の席にちょこんと座った。
アリナは幼女だから遠慮なく座っちゃったけれど、これが十八歳のわたしだったら戸惑ってしまうだろうな。なんて思いながら。幼女でありながらわたしは時々地球時代の気持ちになるから複雑だ。
「お客さん、ありがとうございます。取り皿をどうぞ」
お父さんがわたし達の目の前に取り皿を並べてくれた。




