お客さんとおでん
その時。
「う、うにゃ〜ん!? わたしのおでんが行方不明だにゃん。ウインナーはどこですかにゃん」
「ガォー、このライオン魔獣鳥である俺のおでんが消えたぞ。ウインナーはどこだ。さては、モフにゃー主が食べたのか?」
「何だってにゃん、まさかギャップちゃんがおでんを丸呑みしたのかにゃん!!」
「まさか、犯人はモフにゃー主じゃないのかよ」
なんてうるさい声が聞こえてきた。
「なんだ、モフにゃーとギャップちゃんが騒いでいるな」
お父さんが声のする方に顔を向けた。
「お父さん、気にしないで。さあ、おでんをお客さんの元へ運ぼう」
わたしはトテトテと足をお客さんのテーブルへと進めた。
「それもそうだな。お客さんが腹ペコになっても困るもんな」
お父さんは納得したように頷いた。
にゃーにゃーガォーガォーとうるさい声を無視しておでんのお届けするべくお客さんの席に向かうわたしにお父さんが、「あちらのお客さんだぞ」と言った。
お父さんの視線の先に目をやると、そこには黒髪の日本人ぽい男性が座っていた。年齢はわたしのお父さんと同じくらいかな。
そして、わたしはお客さんの席の前に立ち「お待たせしました。日本料理のおでんで〜す」と言いながらお客さんの目の前に湯気の立ったおでんを置いた。
「おでんですか……」
男性はおでんに目を落としじっと見ている。
どうしたのかな? 美味しそうに見えないのかな。それとも未知の食べ物に戸惑っているのかなとわたしは不安になった。
それはそうと、この男性を見ていると懐かしい気持ちがなぜだか込み上げてきた。
「とっても美味しそうですね」
男性はおでんの湯気に包まれ頬を緩めている。
「良かった〜美味しそうに見えないのかと思った」
わたしは、ほっとして胸を撫で下ろす。
「俺の住んでいた国で食べたことがあるんですよ」
そう言って視線をこちらを向けた男性の顔はおじさんではあるけれど少年ぽさが残っていた。それに、やっぱり日本人と顔が似ている。
「あの、お客さんは食べたことがあるっておでんを知っているんですか?」
わたしがそう尋ねると、「ああ、おでん懐かしいな。それと、お嬢さん君は」とわたしの顔を食い入るように見た。
「へ? わたし? アリナだよ」
「ア、アリナ……アリナちゃん!!」
男性はなぜだか目を大きく見開き声を上げた。
「ん? アリナって名前珍しいかな?」
わたしは首を横に傾げきょとん顔になる。
「あ、いえ、そんなことはないのだけど……」
男性はやっぱりびっくりした表情のままわたしを見ている。そして。
「アリナちゃんに似た女の子を知っているのでつい興奮してしまったんだよ」
「わたしと似た女の子?」
自分とそっくりな女の子がいるんだったら見てみたいなと思った。
「ああ、アリナちゃん君にそっくりで……もう少し君の顔を薄くした女の子なんだけどね。あ、おでんいただくね」
男性はお箸をおでんに伸ばした。わたしは喜んでもらえるかなとちょっとドキドキした。




