アリナの日本料理のおまかせコースだよ
「さてさて、今日一番のお客さんはどんな人かな?」
新しいエプロンをつけているのでいつもよりウキウキする。
「アリナちゃんってばなんかご機嫌だにゃん」
「えへへ、新しいエプロンが嬉しくってね」
「わたしも嬉しいにゃん」
「だよな。新しいエプロンをつけるとやる気満々になるな〜」
なんてエプロンを見せ合いっこしながら話をしていると。
「アリナ〜注文が入ったぞ」とお父さんの元気な声が調理場から聞こえてきた。それとほぼ同時にひょこんとお父さんが洗い場にやって来た。
「えっ? 注文。もしかして日本料理かな?」
「そうだよ、アリナよ。ニホン料理のご注文だぞ」
お父さんは満面の笑みを浮かべわたしを見る。
「わ〜い、日本料理のご注文だね」
「ああ、アリナの出番だぞ」
「それでご注文内容は何かな?」
「う〜ん、それがな。ニホン料理お任せコースだってさ」
「へ!? 日本料理お任せコースなの」
わたしは、びっくりして目を丸くした。
「そうなんだよ、アリナお願い出来るかな?」
お父さんはそう言ってウィンクをした。
わたしはちょっとドキドキしながら「はい、了解」と答えた。
「では、アリナよ。ニホン料理のお任せコースをお父さんもワクワクしながら待っているぞ」
「はい、わたし頑張るね」
わたしは力こぶを作ってみせた。
「じゃあ、アリナ頑張れよ」
お父さんはわたしの頭を優しくぽんぽんとして調理場に戻った。
「アリナちゃん、わたしも楽しみにしているにゃん」
「俺も楽しみにしているぞ」
モフにゃーとギャップがわたしを囲み笑顔を浮かべた。もふもふな二匹に囲まれるとやる気満々になる。もふもふパワーだ。
「さてさて、どんな日本料理を創造しようかな?」
わたしは、顎に人差し指をちょこんと当てて考える。うーん、お任せコースだもんね。わたしが食べたくてそして食べてもらいたものでいいかな。
「そうだ、お味噌汁とおでんなんてどうだろう?」
身も心もほくほくになりそうだよね。
「よし、決めた。おでんとお味噌汁にするぞ」
わたしは、ふふんと笑い腕まくりをする。
「おでんにゃんにお味噌汁にゃん。あ、ねこまんまに出来るにゃん。あ、違う。聖獣ねこまんまに出来るにゃん」
モフにゃーは舌舐めずりをして美味しそうな表情になる。
「おでんにお味噌汁って何だ? 知らんがなんだか美味しそうな予感がするな」
ギャップはおでんとお味噌汁がどんな料理か知らないのに舌舐めずりをした。
「さあ、美味しいおでんとお味噌汁を創造しま〜す」
わたしはにっこり笑顔を浮かべモフにゃーとギャップにウィンクをしてみせた。
さてさてと。大好きだったおでんと懐かしいお味噌汁きっと、美味しくて懐かしくて幸せになれる日本料理が出来上がるはずだ。
おでんの具はそうだな。先ずは大根かな。味がしみしみな大根なんて最高だよね。
「うわぁ~大根を思い浮かべるとヨダレが垂れそうだよ」
「うわぁ~にゃん。わたしも大根を思い浮かべるだけでヨダレが垂れそうになるにゃん」
「俺は大根を思い浮かべると丸呑みしたくなるぜ。グッシッシ」
わたし達はそれぞれ大根に思いを馳せてって、なんか違うような気がする。何故、モフにゃーがヨダレを垂らすの。それにギャップは大根の丸呑みをイメージするんだ。
わたしは気を取り直しおでんの大根を思い浮かべた。そう、真冬に食べるおでんは最高だ。身も心もぽかぽかになる。中まで味が染み込んだしみしみ大根。うわぁーほっぺが落っこちてしまいそうになる。
早く食べたいよ。と、思ったその時。ぽわわ〜んとおでんの大根がお皿の上に舞い降りてきた。
アリナと一緒におでんをどうぞ。




