みんなでおにぎりだよ
お父さんはいつものごとくふにゃふにゃと顔を綻ばせ、「アリナよ、お父さんは世界一の幸せ者だぞ」と言って料理の載っているお盆をテーブルに置いたかと思うと、わたしをぎゅっと抱き締めた。
「お父さんってば苦しいよ~」
「いいじゃないか。愛情表現をしているのだ。愛しきアリナよ」
なんてやり取りを繰り広げていると、
お隣のアクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんがチャイムを鳴らしやって来た。
「親子愛だな」
「あら、仲良しね」
家に入って来たアクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんはクスクスと笑っている。
「笑ってないで助けて~!」とわたしは叫ぶ。だけど、アクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんの視線はわたしから炊飯器とおにぎりの道具に移っていた。その二人の目は丸くなっている。
「これは珍しいな」
「不思議な機械だね」
と、興味津々だ。
「それで、おにぎりを作るんだにゃん」
モフにゃーがわたしの代わりに得意げに答え胸を張った。
「おにぎり?」とアクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんの声が揃う。
「はいにゃん。ごはんをいろんな形に握って海苔で包むんだにゃん」
モフにゃーは海苔を指差しながらわたしがさっき言ったことと同じようなことを言うのだった。
アクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんは、不思議なものでも見るかのように海苔を眺めている。
お母さんがテーブルに誕生日の料理を並べ終えるのとほぼ同時に、タイゾーおじいさんとカーナさん、それからサナとナットーがやって来た。
「おっと、これはなんだ。炊飯器かよ」
ナットーは部屋に入って来るなりじーっと炊飯器を見た。
「ホントだ! 炊飯器だよね」
サナも目を大きく見開き驚いている。
「海苔に梅干しとか色々あるわね。懐かしいわ」
と言ったのはカーナさん。
「ほぅ。梅干しなんて久しぶりに見たぞ」
タイゾーおじいさんも梅干しを見て酸っぱそうな顔をした。
「皆さんはこの不思議な機械を知っているんですね」
驚いた表情を浮かべたアクアお兄ちゃんがみんなの顔を見た。
地球出身のみんなは首を縦に振る。
「すご~い!」と言いながらストロベリーナお姉ちゃんは炊飯器を真剣な表情で覗き込む。
「美味しそうなごはんにゃんでしょ」
モフにゃーはふっふんと笑う。
「このごはんでおにぎりを作ろうね。みんなでね」
わたしはウィンクをしてみせた。
さあ、今日はお父さんとお母さんの心のこもった料理とみんなで作るおにぎり誕生日パーティだよ。




