おチビなわたしと真っ白なもふもふ
いよいよ異世界へ
再び目を開けるとわたしは、良い香りに包まれ見たことのない部屋のベッドで寝ていた。
ここはどこ? 体を起こしわたしは部屋の中をキョロキョロと見渡した。
すると、花がたくさん散りばめられた可愛らしくて華やかな壁紙が目に入る。それとアンティーク調な木製のテーブルの上に真っ白なもふもふ猫がいてスヤスヤと寝息を立てている。
あの猫どこかで見たことがあるなと眺める。気になるので近づいて見てみようとベッドから降りる。
トテンと可愛らしい音がした。
「あれ?」
なんだろう? 何かがおかしいなと首を傾げ歩こうとした。
ん? これは……。
やっぱり何かが変だ。そう視界がいつもより低いのだ。厚底靴を脱いで身長が低くなったレベルじゃない!!
それに体が軽い。まさかわたし縮んだ。それに手に視線を落とすと丸っこいよ。
「やっぱり絶対に変だよ〜」
それに声もいつもより可愛らしいような気がする。これもまた可愛らしい気がするレベルじゃない。
思い出した。神様だ。わたしは、神様にグリーン王国とやらに召喚されたのだったよね。
まさか、あの妖しげな神様におチビになる魔法でもかけられたのだろうか。
そうだ、鏡だ。鏡はどこにある。
全身鏡を見つけたわたしは自分自身の姿を見てびっくりした。
だって、鏡に映るその姿は……。
「信じられない!!」と思わず大声を出してしまう。その声も幼女の声だし、それに何よりもその姿に驚いたのだ。
そうもうお分かりだと思うけれど、鏡に映るその姿は二、三歳くらいの幼女だったのだから。
「あなたは誰ですか?」
わたしは鏡の中に映る自分(信じたくないけれど)をじっと見つめ問いかける。けれど、返事は返ってこない。ただ、鏡の中の幼女がわたしと同じポーズで見つめ返してくるだけだった。
試しに首を傾げて見ると鏡の中の幼女も首を傾げる。
これはもう決定的だ。わたしは幼女になっていたのだ。それにこの幼女は幼き日のわたしの面影がある。
くりっとした丸目で黒目が大きい。ただ、髪の色が黒髪からなぜだか明るめの栗色になっていた。
「わたしなんだよね?」
鏡の中の幼女もわたしと同じように口を動かしている。
その時。
「よく寝たお目覚めだにゃん」と猫語が聞こえてきた。
まさか、そんなことはあるまいなと振り向くと……。
真っ白な白猫がふわふわと肉球のある手を口に当ててあくびをしていた。しかもこの猫ってば二本足で立っている。
「あなたは……猫ちゃんですよね?」
わたしは猫に問いかけてしまった。すると、猫は……。
「はいにゃん」と返事をした。
ちょっと、待ってくださいよ。猫ちゃんが喋っていますよね。それにこの猫はどこか変だ。
だって、その可愛らしいお口から普通の猫よりちょっと長い牙がちょこんと飛び出しているんだもん。
それと、この猫は神社で出会い一緒に異世界召喚されたあの猫にそっくりっていうか本人(本猫?)だよね?
「わたしは神社にいた猫だよ。一緒に異世界召喚されてお喋りが出来る力を神様にもらったにゃん」
猫はそう言って嬉しそうににゃぱーと笑った。
「やっぱりそうなんだね……」
「はいにゃん。それと、わたしは神様から安莉奈ちゃんを守り仕える眷属の使命を与えられましたにゃん。それから、猫から聖獣猫になりましたにゃん」
「は? 眷属? 聖獣猫? それにわたしを守り仕えるの?」
わたしは得意げに胸を張る猫の顔をじっと見た。
「はいにゃん。なので、安莉奈ちゃんわたしに名前を付けてにゃん」
「わたしがあなたに名前を付けるの?」
「はいにゃん。安莉奈ちゃんはわたしの主だもんにゃん」