納豆だにゃん。っていうかどうしてライオン魔獣鳥がいるんですか!!
しばらくの間サナとナットーは言い合いをしていた。そんな二人をわたしはほのぼの気分で眺めていた。
「あ、納豆だにゃん」
「おっ、なんだあのネバネバの食べ物は?」
すっかり忘れていたモフにゃーとギャップがテーブルの前にやって来たかと思うと興味津々な表情で納豆を眺める。
「あ、モフにゃーにギャップちゃん。何処に行ってたの?」
「お父さん手作りのプリンを食べていたにゃん」
「とても美味しかったぞ」
モフにゃーとギャップは舌舐めずりをしている。
「二匹とも食いしん坊だね」
「わたし美味しい食べ物大好きだもんにゃん」
「俺もモフにゃー主と同じくだ。それはそうと、そのネバネバの食べ物は何だ?」
ギャップがわたしの食べている納豆に鼻を近づけクンクンする。それに続きモフにゃーもクンクンする。
「ギャップちゃんこれは納豆だよ」
「不思議な食べ物だな」
「わたし納豆知っているにゃん」
「モフにゃー主は博識だな」
「にゃはは、わたしは知的にゃんだ」
にゃははと誇らしげに胸を張るモフにゃーをギャップは尊敬の眼差しで見ている。
モフにゃーは日本食の納豆を覚えているのかな? というか猫なのに納豆を食べたことがあるのかな。
「ね、ねえ、ラ、ライオン魔獣鳥だよね?」
怯えたようなサナの声が聞こえてきた。
「そうだよ。俺はライオン魔獣鳥だぞ。ふっふん、どうじゃ格好いいだろうよ」
ギャップは鼻息を荒くして答える。サナが怯えていることなんてお構いなしだ。
「ラ、ラ、ラ、ラ、ライオン魔獣鳥がどうしてここに居るの? しかも、なんかチビッコサイズになって!!」
サナのギャップを指差すその指先は恐怖にぷるぷる震えている。
「ギャップちゃんはね、わたしがテイムしちゃったんだにゃん。だから、怖くないにゃん」
モフにゃーは胸を張りサラッと言う。
「はぁ!! へ? ラ、ライオン魔獣鳥をテイムしたって!」
「え!! あの百獣の王鳥ライオン魔獣鳥をテイムしたってこの猫ちゃんは何者だ〜!!」
サナとナットーはそれはもうびっくりしたようだ。
「にゃはは、わたしはアリナちゃんの眷属モフにゃーだにゃん。あ、わたし猫ちゃんじゃなくて聖獣猫だにゃん」
モフにゃーはにゃははと得意げに答えた。
「え? ライオン魔獣鳥をテイムした最強な猫ちゃんを眷属にしているアリナちゃんってす、凄すぎるよ!!」
「し、信じられないぞ……」
口々にそう言ったサナとナットーは目を大きく見開きモフにゃーとわたしを交互に見る。
「へ? わたしって凄いの?」
わたしは人差し指を顎に当てきょとんと首を傾げる。
「凄いよ。だって、百獣の王鳥のライオン魔獣鳥をテイムした猫ちゃんを眷属にしているんでしょ?」
「うん、神様がモフにゃーにわたしの眷属になる使命を与えたみたいなんだよ。だから、わたしが凄いんじゃなくて神様の力なんだよ」
「その力を与えられたことが凄いと思うよ」
サナが興奮した口調で言う。
「そうだよ。アリナちゃんは凄い力をもらったんだよ。それはきっと、神様に期待されているんじゃないかな」
ナットーも納豆と親子丼を交互に食べながら言った。
「期待されている。わたしが!」
地球では無能で誰からも愛されなかったわたしが……。神様に期待されているなんてそんなことがあるのかな?
でも、そうだったら嬉しい。
「うん、アリナちゃんは絶対期待されているよ。それにしてもこの親子丼と納豆は美味しいな」
ナットーは親子丼に納豆をのせ大きな口を開けて食べた。豪快な食べ方だな。
「アリナちゃんは料理を創造する力も優れているしな」
ギャップがふんふんと笑いながらサナとナットーが食べている納豆にクンクンと鼻を近づけた。
「ぎゃ〜!! ラ、ライオン魔獣鳥が近づいてきた!!」
サナは大声で叫んだ。
「ん? 何故脅える? 俺は取って食ったりしないぞ」
「だって、ライオン魔獣鳥は猛獣な鳥なんだもん!」
サナはやっぱりギャップが怖いみたいだ。可愛らしいのにね。
一方ナットーは余裕で納豆を食べている。
「ギャップちゃん、お姉さんが怖がっているにゃん。こっちに来るのだにゃん」
モフにゃーがもふもふな手でギャップを手招きする。
「俺は何も悪いことはしていないのにな……モフにゃー主がそう言うのなら仕方ないな〜」
ギャップはサナの納豆から離れモフにゃーの元へ向かう。
と、それと入れ替わりにモフにゃーがサナのテーブルに近づいたかと思うと納豆を横取りしたんですけど。
「あ、それ、わたしの納豆だよ」
サナが叫ぶも納豆はモフにゃーがもぐもぐ食べている。
「……モフにゃー主ってまさか納豆が食べたかっただけなのかな……」
「ギャップちゃん正解みたいだよ」
「なんてことなんだ。モフにゃー主の奴は食いしん坊すぎるぞ」
わたしはガックリと肩を落とすギャップの肩を優しくぽんぽんと叩き慰めた。
「アリナちゃんは優しいな」
ギャップは頬を緩めわたしを見る。
「アリナちゃん、そのラ、ライオン魔獣鳥は怖くないのかな?」
サナが恐る恐るわたしに聞く。
「うん、ギャップちゃんは怖くないし可愛いんだよ」
「むむっ。俺は可愛いというかカッコいいんだけどな」
ギャップはたてがみを肉球のある可愛らしい手で触りながらわたしとサナの顔を交互に眺めた。
「ギャップちゃんっていうんだね。なんか可愛らしいね」




