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この世界が愛おしい

「アリナはお客さんと仲良くなったみたいだな」


 サナとナットーと笑い合っているとお父さんがわたしの肩に手を置き言った。


「うん、サナちゃんとナットー君と準備体操をしていたら仲良くなったんだ」


 準備体操なんて本当はしてないけど……。お父さんごめんなさいと心の中で謝りながらわたしはにっこりと笑う。


「そうか。それは良きことだな。では、お父さんは仕込みでもしてくるからお客さんとゆっくりしてなさい」


「うん。そうするよ」


「お客さん、いや、サナちゃんにナットー君アリナをよろしく頼みますね」


 と、お父さんは二人に頭を下げキッチンに戻った。


 わたし達はお父さんの背中を見送り、その姿がキッチンに消えると、「素敵なお父さんだね」とサナとナットーがほぼ同時に言った。


「うん、わたしに甘くて激愛ぶりが時々鬱陶しいけど大好きなお父さんだよ」


 こんなふうに答えることが出来てわたしは嬉しかった。


「アリナちゃんは可愛がられているんだね」

「うん、もうたくさんの愛をもらっているよ」


 わたしはお父さんとお母さんの娘になれて良かった。この世界がとても愛おしい。


「ねえ、サナちゃんとナットー君の住んでいるお花屋さんはどんなところなの?」


 わたしは、自分用の納豆も手早く創造しその納豆を食べながら尋ねる。


「一階の花屋はたくさんの花や緑に囲まれた癒しの空間になっているよ。それと、二階は自宅なんだけどそこも花をたくさん飾っているんだよ。わたしの部屋も色とりどりの花を飾っているよ」


「俺達のお父さんとお母さんは花をこよなく愛する人達なんだよね」


「そっか、お花に囲まれた生活っていいなぁ」


 ん? ちょっと待てよ。俺達のって!!


「ねえ、俺達のお父さんとお母さんってサナちゃんとナットー君はお花屋さんの息子と娘になったの?」

「うん、俺とサナちゃんは養子になったんだよ」

「二人はわたし達を本当の子供のように愛してくれているよ」


 サナちゃんとナットー君の笑顔は幸せそうで、そして誇らしげだった。


「二人とも愛されているんだね。良かった〜あ、サナちゃんとナットー君は姉弟になったの?」

「うん、ちょっと変な奴だけどナットーはわたしの弟になったよ」

「あ、変な奴とはなんだよ。サナちゃんこそワガママ姉ちゃんじゃないか」


 なんて言い合いをしている二人はまるで本当の姉弟のように見えて、ちょっといいなと思った。


「ワガママって何よ!」

「本当のことだろう」


 ぷんすかぷんぷんと睨み合う二人を見ていると、なんだかほっこりした。



「あ、アリナちゃんどうして笑っているのかな?」

「そうだよ、アリナちゃんどうして笑っているんだよ」 


 ぷんすかぷんぷんと睨み合っていた二人がほぼ同時にこちらを見て言った。


「だって、本当の姉弟みたいで楽しそうなんだもん。いいなぁって思ったんだよ」 


 わたしもきょうだいがほしいな。なんか羨ましいな。でも、わたしにだってモフにゃーがいるしギャップも加わったもんねーだ。


「そっかな。この子とアリナちゃんを交換したいくらいだよ」


 サナはナットーを指差す。


「な、なんだって! それはこっちのセリフだぜ。サナちゃんとアリナちゃんを交換したいよ。俺、妹ほしいよ」


 ナットーもピシッとサナを指差す。


 二人は睨み合い、それからわたしに視線を向ける。


「あはは、サナちゃんとナットー君はもう立派な姉弟だよ〜羨ましいくらいそっくりだもん」 


「ど、どこが!」

「似てないよ」

「いいなぁ。仲良しで」

「はぁ? 仲良し。この子と」

「はぁ? このワガママ姉ちゃんと」


 サナとナットーは口を尖らせた。その表情もやっぱりそっくりだった。何も知らなければ血の繋がった姉弟だと誰もが思うはずだよ。


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