お客さんの元へ親子丼を運びます
さてさて、親子丼を創造するぞと、わたしは気合いを入れた。
モフにゃーとギャップのお陰でとーっても美味しそうな親子丼が完成した。
「親子丼の完成で〜す!」
テーブルの上には湯気の立ったホッカホカな親子丼がある。
「わ〜い! 親子丼だ〜食べるぞにゃん」
「わ〜い! 親子丼の完成だな」
モフにゃーとギャップがパチパチパチと拍手をしてくれた。
「えへへ、ありがとう。あ、モフにゃーのじゃないからね」
「うにゃん、わたしの親子丼じゃないのか……仕方ないにゃ〜ん」
口を尖らせながら親子丼を眺めるモフにゃーの食い意地の張ったお口に呆れちゃう。
「モフにゃーてば食いしん坊なんだから。さて、わたしは親子丼を運ぶからモフにゃーとギャップちゃんはお水を運んでね」
「は〜いにゃん」
「了解だぜ」
わたしは、お盆に親子丼を二つ載せテーブルに運ぼうとしたんだけれど、重たい。幼女のわたしには重すぎる。腕がぷるぷる震えてしまう。
「おっと、アリナよ。大丈夫かい? お父さんが運ぶぞ」
「ありがとうお父さん。でも、親子丼初注文だから自分で運びたいの」
わたしはお父さんを見上げて言った。
「そうかそうか、アリナ。では、こうしよう。お父さんが親子丼を一つ運ぶからアリナも一つ運ぶのはどうかな? それだったら大丈夫かな?」
「お父さん、グッドアイデアだよ」
「我が娘アリナと料理を運べるなんて俺は幸せだぞ」
「お父さんってば、なんか嬉しそうだね」
「そりゃあ嬉しいよ。さあ、アリナ親子丼をお客さんの元へ運ぶぞ」
「は〜い! 了解」
そんなこんなでわたしとお父さんは親子丼を一つずつ運んだ。自分が創造した親子丼をお客さんの元へ運べるなんて嬉しい。
それにお父さんも喜んでいるし尚更だ。そんなわたしとお父さんの後ろにお水をお盆に載せ運ぶモフにゃーとギャップがついてくる。
「お待たせしました〜我が娘アリナ特製の親子丼でございま〜す」
「親子丼で〜す」
「お水ですにゃん」
「お水だぞ」
と、わたし達は口々に言う。
お客さんは目の前に置かれた親子丼に目を落とし「なんだか懐かしい。親子丼だ」、「このふわふわ感のある親子丼懐かしいかも……」と言った。
そうでしょう。懐かしいよね。ってちょっと待ってください。どうして日本料理である親子丼が懐かしいのかな?
お客さんの男の子も女の子も親子丼をじっと眺めている。
そんなに二人をわたしは、じっと見る。くりくりっとした目の犬っぽい男の子に、くりっとした黒目が大きい猫っぽい女の子。
やっぱりどこかで見たことがある。そんな気がするのだ。
うーん、誰だったかな? 喉まで出かかっているのに思い出せない。
わたしは、あごに指を当てて考える。
「あ!!」
思い出した。そうだよ、この二人は……。わたしは、思わず二人のお客さんを指差してしまった。
「あなた達は!!」
わたしは指差したままの状態で大きな声を出す。
男の子と女の子は顔を上げわたしを見た。その二人の目とわたしの目が合う。
二人は揃って目を丸くしている。やっぱり間違いない。この人達はそう。
「黄色のバスに乗っていた人ですよね?」と、わたしは尋ねた。
「黄色のバスってまさか?」
「え? それって君はまさか……」
男の子と女の子の目は更に大きくなる。
「はい、わたしあの黄色のバスに。あ、ちょっと、こっちに来てください」
わたしは男の子と女の子を外に連れ出した。
「アリナどこへ行くんだい?」
お父さんがドアを開けて顔を出す。
「あ、えっと、お客さんが親子丼を食べる前に準備体操をしたいんだって」
「え? 準備体操かい?」
お父さんは不思議そうな表情になり首を傾げる。
「うん、準備体操だよ。お父さんは親子丼に合うスープでも作ってね」
「親子丼にスープを付けるのかい?」
「そうだよ。親子丼にはスープが必要だからお願い作ってね」
わたしは、可愛らしく見えるように指を組んでお願いをしてみせる。
そして、お父さんを店の中へ押し込む。本当は親子丼にはスープよりもお味噌汁が合うんだけどねと思いながら。
「わかったよ。アリナがそう言うんだったら腕によりをかけてスープを作るぞ」
お父さんは、「よし」と気合いを入れた。
準備体操だなんて苦しい言い訳だけど、結果オーライだもんね。




