もふもふ
家に着くと夕飯の匂いがぽわぽわと漂っていた。なんか、その匂いにほっとするのと同時になんだか切なくなった。
地球時代のわたしは、他所の家のご飯の匂いが堪らなく羨ましかった。だって、叔母さんと叔父さんとそれから富菜ちゃんと食べる夕飯は息苦しかった。
ただ、無理やりご飯を口の中に詰め込んだ。そんな感じだった。時々富菜ちゃんがいじわるな視線を向けてくる。その目にわたしはびくびくと怯え体を縮こませていた。
そんな記憶がじわじわとよみがえり体がぶるぶると震えた。もう、あんな生活はしたくない。今が幸せだからこそ強くそう思う。
地球の日本で真来と過ごした日々はきっと、楽しかったと思うけれど、ほとんど覚えていない。
「アリナちゃん、どうしたにゃん?」
気づくと真っ白なもふもふなモフにゃーが心配そうにわたしの顔を覗き込んでいた。
「えっと、今はモフにゃーやみんながいて幸せだなって思ったんだよ」
わたしは、頬を緩めモフにゃーをじっくり見た。そして、もふもふなモフにゃーをぎゅっと抱きしめた。
「うにゃん? アリナちゃん」
モフにゃーはもふもふふわりしていてとってもあたたかい。生きているなって実感する。
「すっかり乾いてもふもふなモフにゃーに復活だね」
わたしはにっこりと微笑みを浮かべモフにゃーを強くぎゅっと抱きしめた。
「アリナちゃん、苦しいにゃん。そうだよ、わたしはもふもふなモフにゃーだよ。アリナちゃんが付けてくれた名前にふさわしい聖獣猫にゃんだ」




