さっぱりしたぞ
「日焼けちゃんどうしてそうなるの?」
「ん? アリナよ、どうしたんだい」
「わたしのお手本を見ていたよね?」
「ああ、この真っ黒な目を見開き見ていたぞ」
日焼けはきょとんとして首を横に傾げた。その顔を見たわたしは笑いそうになる。だって……。
「じゃあ聞くけどどうして日焼けちゃんの頭が泡だらけなの?」
「ん? おっ、これかい。アリナの真似をして頭を綺麗にしたのだぞ」
「……わたし頭なんて洗っていないよ」
そうなのだ。わたしがスポンジを泡立て食器をゴシゴシと洗って見せたんだけど、何を思ったのか日焼けは自身の頭を泡立てたスポンジで洗ったのだ。
「これかい。真っ黒魔獣は形から入るのさ」
とわけのわからない返事をしニッと笑う日焼け。
「形から?」
「そうだよ、その食器とやらを洗う前にこの俺自身で試してみたんだよ」
「わたし理解できないよ……」
「幼女なアリナは理解できないのか。さて、頭のアワアワを洗い流すぞ」
日焼けはそう言ったかと思うとシンクに泡まみれの頭をつっこみ魔法具水道のハンドルを捻りザッバーンと洗った。
「ひ、ひ、日焼けちゃん!!」
わたしは口をぱくぱくさせ叫んだ。
ギャップとモフにゃーはなぜだか拍手をしている。
「う〜ん、気持ちいいぞ〜!! 気分爽快だ〜」
ザッバーン!! ザッバーン!!
と頭をゴシゴシ洗う日焼けに呆れて言葉も出てこない。
「俺もザッバーンしようかな」
「わたしもザッバーンしようかにゃん」
モフにゃーとギャップが日焼けが頭を洗うその姿に興味津々だ。って……。
「真似しなくていいから!!」
「うにゃん? 水浴び気持ちよさそうにゃのにな」
モフにゃーはもふもふな手を噛み噛みしながら言った。
ギャップも「頭を洗うとさっぱりしそうなんだけどな」とじーっと日焼けの姿を眺めている。
「ここは、お風呂じゃな〜い!!」
わたしは大声を上げた。
その時。
「さっぱりしたぜ」とまるでお風呂上がりのような声がした。そちらに目を向けると。
日焼けが頭を洗い終えさっぱりした顔をしているのだけど、床がびしゃびしゃだよ。




